1948年世界 20世紀
病気ではなく健康を定義した憲章が発効、世界保健機関が発足
日付と暦
- 原典表記
- 1948年4月7日(グレゴリオ暦)
- 換算
- 1948-04-07(グレゴリオ暦)
- 掲載日
- 4月7日のページ
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概要
1946年6月19日から7月22日にかけてニューヨークで開かれた国際保健会議で、各国の代表は7月22日、世界保健機関(WHO)憲章に署名した[SRC-01869][SRC-01872]。しかし、この日に「WHOが誕生した」と言い切ってしまうと、正確ではない。憲章そのものが定める発効の要件は、国連加盟国26か国が締約国となることであり[SRC-01869]、この要件が満たされて憲章が実際に効力を生じた(発効した)のは、署名から約1年9か月後の1948年4月7日である[SRC-01869][SRC-01872][SRC-01873]。WHOはこの発効の日をもって、国連の保健分野の専門機関として正式に設立された[SRC-01868][SRC-01872][SRC-01873]。「署名」と「発効(設立)」というよく似た2つの日付を、本記事では区別して扱う。なお、WHO憲章は、健康を単なる疾病の不在ではなく身体的・精神的・社会的に完全に良好な状態として定義したことでも知られる[SRC-01868][SRC-01873]。
本文
WHO憲章は、国連加盟国26か国が締約国となった時点で発効すると定めている(第80条、英語原文: "This Constitution shall come into force when twenty-six Members of the United Nations have become parties to it in accordance with the provisions of Article 79.")[SRC-01869]。締約国となる方式は第79条が定めており、(i)承認に関して留保のない署名、(ii)承認を条件とする署名の後の受諾、(iii)受諾、の3通りがある[SRC-01869]。1946年7月22日に署名した国にとって、この署名は締約国となるための手続の起点である。ただし(iii)の受諾の方式では、署名を経ずに締約国となることもできる[SRC-01869]。国連条約集(国連事務局が管理する公式の条約ステータス記録)は、WHO憲章について、第80条に基づく発効日を1948年4月7日、登録日を同じく1948年4月7日と記録している[SRC-01872]。
憲章の末尾には、作成地と作成日を記す条項が置かれている(英語原文: "DONE in the City of New York this twenty-second day of July 1946, in a single copy in the Chinese, English, French, Russian and Spanish languages, each text being equally authentic."。ニューヨーク市で1946年7月22日に、中国語・英語・フランス語・ロシア語・スペイン語の5言語を単一の原本として作成し、いずれの言語文も等しく正文とする、という趣旨の条項——訳は本サイトによる)[SRC-01869]。
WHO憲章は、健康の定義でも知られる。憲章原文の前文第1原則に記された英語原文は "Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity."(健康とは、単なる疾病または病弱の存在しないことではなく、身体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態をいう——訳は本サイトによる)である[SRC-01869]。WHO自身の公式サイトも同じ文言でこの定義を掲げている[SRC-01868]。ブリタニカも同じ定義を引用しているが、その引用範囲は "a state of complete physical, mental, and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity."(文頭の "Health is" を欠き、"mental" の後のカンマの有無も憲章原文と異なる)であり、憲章原文・WHO公式サイトの表記と完全には一致しない[SRC-01873]。WHO公式サイトに掲載された、テドロス事務局長による記念コメンタリーは、この定義の言葉が1946年の国際保健会議で発言したアンドリヤ・シュタンパル(クロアチア出身、当時のユーゴスラビア代表)の言葉に由来し、それが憲章冒頭の定義の基になったと記す[SRC-01870]。シュタンパルは、1948年に開かれた第1回世界保健総会(WHA)の初代議長も務めた[SRC-01870]。
歴史的背景
WHOは、伝染病対策・検疫・医薬品規格に関する個別の任務を、国際連盟保健機関(1923年設立)とパリの国際公衆衛生事務局(1907年設立)から引き継いだとブリタニカは記す[SRC-01873]。国連条約集の脚注も、WHO憲章を作成した1946年の国際保健会議が、憲章のほかに「国際公衆衛生事務局(Office international d'hygiène publique)に関する議定書」を作成したことを記しており、この前身機関が1946年の会議と同じ枠組みで扱われていたことがうかがえる[SRC-01872]。両組織のその後の消滅・統合の経緯や、WHOへの具体的な資産・人員の引き継ぎの詳細までは、確認できた出典の範囲では確かめられなかった。
WHO憲章の署名にあたっては、複数国の代表が個別の役割を担ったとWHO公式コメンタリーは記す。米国公衆衛生局長官トマス・パランが1946年の国際保健会議を招集・主宰し、英国代表ウィリアム・ジェイムソンや、フランスの憲章草案を共同提出したアンドレ・カヴァイヨン、グザヴィエ・ルクランシュらが憲章条文案の起草に関わったという[SRC-01870]。この人物関係の記述はWHO公式コメンタリー1系統のみに依拠しており、他の出典での裏付けは取れていない(下記の異説・論争欄も参照)。
WHOの本部は、ジュネーブに置かれている[SRC-01873]。
タイムライン
| 日付(暦種別を明記) | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1907年(グレゴリオ暦) | パリで国際公衆衛生事務局(Office international d'hygiène publique)が設立される(前身組織の1つ) | [SRC-01873] |
| 1923年(グレゴリオ暦) | 国際連盟保健機関(Health Organisation of the League of Nations)が設立される(前身組織の1つ) | [SRC-01873] |
| 1946年6月19日〜7月22日(グレゴリオ暦) | ニューヨークで国際保健会議が開かれる | [SRC-01869][SRC-01872] |
| 1946年7月22日(グレゴリオ暦) | WHO憲章がニューヨークで署名される | [SRC-01869][SRC-01872] |
| 1948年4月7日(グレゴリオ暦) | WHO憲章が発効し、WHOが正式に設立される | [SRC-01868][SRC-01869][SRC-01872][SRC-01873] |
| 1948年(グレゴリオ暦、日付は確認できた出典に記載なし) | 第1回世界保健総会(WHA)が開かれ、シュタンパルが初代議長を務める | [SRC-01870] |
異説・論争定説のない論点があります
WHO憲章に1946年7月22日に署名した国の数について、確認できた2つの一次的な記録の間で数字が食い違う。
| 論点 | 説 | 根拠・出典 | 学界での位置づけ |
|---|---|---|---|
| 1946年7月22日にWHO憲章へ署名した国の数 | 61か国 | WHO公式発行のBasic Documentsに付された編集脚注(典拠としてWHO公式記録集第2巻100頁を引用)[SRC-01869] | WHO自身による公式記録上の数字 |
| 1946年7月22日にWHO憲章へ署名した国の数 | 59か国 | 国連条約集のステータス表示が直接記載する累積の署名国数 "Signatories : 59."(2026年9月28日時点)[SRC-01872] | 条約の寄託者(国連事務局)が公式に表示する数字。ただし日付を限定しない累積表示であり、1946年7月22日当日の署名国数を直接宣言するものではない |
いずれも国連やWHOという公的機関自身が編纂した記録である。ただし61は「1946年7月22日に署名した国の数」というWHOの記述、59は「2026年9月28日時点で累積の署名国となっている数」という国連条約集の記述であり、必ずしも同一の対象を数えたものとは限らない。本サイトはどちらが正しいかを判定しない。参考として、国連条約集の締約国一覧表を欄単位で数えたところ、署名日として「22 Jul 1946」と記載されている行はSignature欄に57件、Definitive signature(s), Acceptance(A)欄に「22 Jul 1946 s」と記載されている行が2件(中国、英国)あった[SRC-01872]。同じページのステータス表示は "Signatories : 59." と直書きしており、署名日が「22 Jul 1946」以外の日付である行も2件ある(ハンガリー、1947年2月19日/スウェーデン、1947年1月13日)[SRC-01872]。61との数字の差の原因(集計対象・集計時点の違い、後年の国家承継の扱いなど)は、これらの点を踏まえてもなお、確認できた出典の範囲では特定できなかった。
なお、WHO憲章の起草・署名に関わった各国代表の氏名・役割(トマス・パラン、シュタンパル、チザムらを含む)は、WHO公式コメンタリー1系統のみに依拠する記述であり、他の独立した出典での裏付けが取れていない。これらの人物に関する記述と、複数の独立した記録が一致する発効日・署名日・発効要件の記述とでは、裏付けの厚さが異なる点に留意されたい。
関連する出来事
- 1907年、パリで国際公衆衛生事務局が設立された。WHOは、この組織と1923年設立の国際連盟保健機関の双方から、伝染病対策・検疫・医薬品規格に関する任務を引き継いだとブリタニカは記す[SRC-01873]。
- 1923年、国際連盟保健機関が設立された。WHOは、この組織と1907年設立の国際公衆衛生事務局の双方から、伝染病対策・検疫・医薬品規格に関する任務を引き継いだとブリタニカは記す[SRC-01873]。
- 1948年、第1回世界保健総会(WHA)が開かれ、シュタンパルが初代議長を務めた[SRC-01870]。WHOの運営体制は、毎年開催される世界保健総会と、専門家からなる執行理事会からなる[SRC-01873]。第1回WHAの開催は、この運営体制が実際に動き始めた出来事と位置づけられる(本サイトの整理)。
関連人物
- 世界保健機関(WHO): 本記事の主題である憲章によって設立された組織そのもの[SRC-01868][SRC-01872][SRC-01873]。
- ブロック・チザム: カナダ出身。WHO初代事務局長として1948年から1953年まで務めたとWHO公式コメンタリーは記す[SRC-01870]。
- アンドリヤ・シュタンパル: クロアチア出身。1946年の国際保健会議に当時のユーゴスラビア代表として参加し、その発言が憲章冒頭の健康の定義の由来になったとされ、1948年の第1回世界保健総会で初代議長を務めた[SRC-01870]。
歴史的意義
WHO憲章第1条はその目的を "the attainment by all peoples of the highest possible level of health"(全ての人々が可能な限り最高水準の健康に到達すること——訳は本サイトによる)と定めている[SRC-01869]。WHO自身の公式サイトも同じ文言でこの目的規定を掲げている[SRC-01868]。ブリタニカも同じ目的規定に触れているが、引用符で囲んでいるのは "the highest possible level of health" の部分のみであり、"by all peoples"(全ての人々による)は引用符の外側の地の文として、憲章原文とは異なる語順で書かれている[SRC-01873]。健康を単なる疾病の不在ではなく積極的な良好状態として定義した点、そしてその達成をすべての人々にとっての到達目標として掲げた点は、第二次世界大戦直後という時代背景の中で書かれた憲章の特徴として、WHO自身が現在も自組織の公式サイトの "Principles" 節でこの定義を掲げ続けていることに表れている[SRC-01868]。
WHO憲章の前身にあたる国際連盟保健機関(1923年設立)・国際公衆衛生事務局(1907年設立)は、それぞれ個別に設立された組織だった[SRC-01873]。両者の設立年の隔たりを踏まえると、第一次世界大戦前後という異なる時代の枠組みの中で設立されたと読める(本サイトの整理)。これらの任務を単一の国連専門機関に引き継がせたことは、戦後の国際保健協力を1つの枠組みに集約する試みだったと読める(本サイトの整理)。
現代の視点
WHOは毎年、設立日である4月7日を世界保健デーとして記念しており、WHO公式サイトはこの日をWHOの設立記念日と位置づけている[SRC-01871]。ブリタニカも同様に、WHOが自らの設立日である1948年4月7日を毎年、世界保健デーとして祝っていると記す[SRC-01873]。
国連条約集によれば、WHO憲章の締約国(Parties)は194に達している(2026年9月28日時点のステータス表示)[SRC-01872]。1948年の発効時点で必要とされた国連加盟国26か国という要件と比べると、現在の締約国数は当時よりはるかに多い。
本記事は、1946年の憲章署名から1948年の発効(設立)に至る経緯と、憲章の目的・定義を扱うものである。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応をはじめとする、近年の具体的な保健危機に対するWHOの対応の当否については、本記事の評価の対象外とする(本記事はその評価に立ち入らない)。
出典一覧
- [SRC-01868] WHO Constitution/World Health Organization(ランクA)
- [SRC-01869] Basic documents, 49th edition (includes amendments adopted up to 31 May 2019) — Constitution of the World Health Organization/World Health Organization(ランクS)
- [SRC-01870] 80 years strong: the WHO Constitution/World Health Organization(ランクB)
- [SRC-01871] World Health Day/World Health Organization(ランクA)
- [SRC-01872] Chapter IX — Health. 1. Constitution of the World Health Organization. New York, 22 July 1946 (UN Treaty Collection — status as at 28-09-2026)/United Nations Treaty Collection (Office of Legal Affairs, United Nations)(ランクS)
- [SRC-01873] World Health Organization | Britannica/Encyclopaedia Britannica, Inc.(ランクB)
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訂正履歴
| 版 | 日付 | 事実主張への変更 |
|---|---|---|
| 1 | 2026-09-29 | あり |
| 2 | 2026-09-29 | あり |
| 3 | 2026-09-29 | あり |
| 4 | 2026-10-09 | なし |
| 5 | 2026-10-09 | なし |
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