バーディーンとブラッテンがゲルマニウムに金の接点を押し当てると、電気信号は真空管なしで増幅された——トランジスタの「発明日」は一つに定まらない

日付と暦

原典表記
1947年12月23日(グレゴリオ暦)
換算
1947-12-23(グレゴリオ暦)
掲載日
12月23日のページ

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概要

1947年12月16日、ニュージャージー州マレーヒルのベル電話研究所で、ジョン・バーディーンとウォルター・ブラッテンは、高純度ゲルマニウムの小片に2本の金の接点を近接させて押し当てた[SRC-01028]。電気信号は、固体素子によって初めて増幅された[SRC-01028][SRC-01027]。1週間後の12月23日、この装置は研究所の首脳陣の前で実演された[SRC-01027][SRC-01030]。オーディオ回路に組み込み、音が確かに増幅されることを聞かせたという[SRC-01027]。指導者だったウィリアム・ショックレー自身が考案した電界効果型の試作はうまく動かず、その後の原因解明にこの2人があたっていた[SRC-01028][SRC-01030]。だが、この一連の出来事の中で「発明日」をどこに置くかは、出典によって答えが割れる。本サイトは12月23日のページに掲載しつつ、その幅をそのまま記録する[SRC-01026]。

本文

ベル研究所は、電話網の増幅器・スイッチとして使われていた真空管や電磁式リレーに代わる、半導体を用いた固体素子の開発を目指していた[SRC-01027]。1945年、マーヴィン・ケリーのもとで固体物理グループが編成され、ショックレーと化学者スタンリー・モーガンがその指揮を執った[SRC-01028][SRC-01027]。ショックレーは同年、電界効果を利用した増幅器を考案したが、狙いどおりには動作しなかった[SRC-01028][SRC-01030]。

翌1946年、理論物理学者バーディーンは、半導体表面の電子が電界の侵入を妨げているのではないかと示唆し、実験物理学者ブラッテンとともに、この「表面準位」の挙動を調べる研究を始めた[SRC-01028]。IEEE Milestoneの公式顕彰文は、この一連の探究を1947年11月17日から12月23日までの期間として記録している[SRC-01026]。

12月16日、バーディーンとブラッテンは、プラスチックのくさびに固定した2本の金接点をゲルマニウムの小片表面に近接させ、一方の接点の電圧でもう一方を流れる電流を変調させることに成功した——固体素子による、初めての電気信号の増幅だった[SRC-01028]。信号は最大100倍まで増幅されたという[SRC-01028]。1週間後の12月23日、雪の降る日に、バーディーンとブラッテンは研究所の上級科学者・幹部を前に、この装置をオーディオ回路に組み込んで音を増幅して聞かせた[SRC-01027]。真空管と違い、ウォームアップの時間なしに即座に動作したという[SRC-01027]。ショックレーはこれを「すばらしいクリスマスの贈り物」と評したとされる[SRC-01028]。

この装置は、まもなく電気技術者ジョン・ピアースによって「トランジスタ」と名付けられた[SRC-01028]。ベル研究所が報道機関に公式発表したのは、半年以上後の1948年6月30日である[SRC-01028][SRC-01027]。

歴史的背景

ベル研究所の親会社アメリカ電信電話会社(AT&T)は、電話網の増幅に使う真空管が消費電力・発熱の大きさや壊れやすさの点で不十分だったため、より信頼性の高い代替素子を求めていた[SRC-01030][SRC-01024]。点接触型トランジスタの実証は、こうした課題への解として生まれ、後の集積回路・電子機器の小型化につながる出発点になったとされる(本サイトの整理)[SRC-01024]。

タイムライン

日付(暦種別を明記) 出来事 出典
1945年(グレゴリオ暦) ショックレーが電界効果型増幅器を考案するが動作せず、以後の原因解明にバーディーンとブラッテンがあたる [SRC-01028][SRC-01030]
1946年(グレゴリオ暦) バーディーンが半導体の「表面準位」に着目し、ブラッテンと共同研究を開始 [SRC-01028]
1947年12月16日(グレゴリオ暦) バーディーンとブラッテンが点接触型の装置で初めて固体素子による電気信号の増幅に成功(本記事の主題の一部) [SRC-01028][SRC-01027]
1947年12月23日(グレゴリオ暦) 研究所首脳陣にこの装置が実演された(本サイトの掲載日・本記事の主題) [SRC-01027][SRC-01030][SRC-01026]
1948年6月30日(グレゴリオ暦) ベル研究所がニューヨークでの記者会見で報道機関に公式発表 [SRC-01028][SRC-01027]
1951年(グレゴリオ暦) ショックレーが開発した別方式の接合型トランジスタをベル研究所が発表したとされる [SRC-01027]
1956年(グレゴリオ暦) ショックレー・バーディーン・ブラッテンがノーベル物理学賞を共同受賞 [SRC-01029][SRC-01025][SRC-01030][SRC-01027]
異説・論争 — 定説のない論点があります(開く)

本記事の中心的な論点は、トランジスタの「発明日」がいつなのかという、日付そのものの特定である。本サイトはいずれの日付が「正しい発明日」かを判定せず、出典ごとに異なる扱いをそのまま記録する。

論点1: 発明日を12月16日・12月23日・期間のどれとして扱うか

  • 12月16日を単独で採用する説: Nokia Bell Labs公式ブログ(発明が行われた研究機関の後継企業自身による記事)は「75 years ago, on Dec. 16, 1947, they made a breakthrough」と、12月16日のみを75周年の起算日に採用し、本文中に12月23日への言及は一切ない[SRC-01024]。
  • 12月23日を「公式化」の日とする説: American Physical Society(物理学分野の国際専門学会)の解説は、12月23日に装置を首脳陣(VIP)へ示したことをもって「it became official(公式に発明したことになった)」と記し、本文中に12月16日への言及は一切ない[SRC-01030]。
  • 両日を別の出来事として区別する説: Computer History MuseumとETHW(IEEE History Center運営)は、12月16日を「研究が初めて成功した日」、12月23日を「研究所幹部への実演日」として、両方を別の出来事として時系列で明確に書き分けている[SRC-01028][SRC-01027]。
  • 単一の日を選ばず期間として扱う説: IEEE Milestoneの公式顕彰文(プレート文)は、単一の日付を選ばず「1947年11月17日から12月23日まで」を一体の業績期間として記録している[SRC-01026]。ただし同じIEEE Milestoneのページの参考文献欄には、IEEE Journal of Solid-State Circuits(1997年12月号)掲載の論文からの引用として「By December 16, 1947, they had a working point-contact transistor.」という12月16日の記述もある[SRC-01026]。

学界(顕彰機関)での位置づけ: 独立した4系統(ベル研究所後継企業・IEEE/ETHW・Computer History Museum・APS)の記述を突き合わせると、「12月16日に初めて動作した」ことと「12月23日に首脳陣へ実演した」ことの両方が、独立の出来事としてそれぞれ複数系統から記録されている。どちらを「発明日」と呼ぶかは、事実そのものの対立ではなく、出典が採用する慣用・文脈の違いである(本サイトの整理)。本サイトは、実演・公式化の画期として位置づける記述があること(APS・IEEE Milestoneの期間終点)を踏まえ、12月23日のページに掲載する。

論点2: 同一の発行主体の中での日付の食い違い

Nokia Bell Labs公式サイトの「1956 Nobel Prize in Physics」ページの本文は「1947年12月16日、バーディーン・ブラッテン・ショックレーの3名が初めて動作するトランジスタを完成させた」と記し[SRC-01025]、続けて「クリスマスイブ(12月24日)」にマイクを使った実演で信号が18倍に増幅されたと記す一方、同じページの写真キャプションは「ブラッテンの実験ノートが記録するのは1947年12月23日の出来事であり、その日にトランジスタ効果が発見された」と記す[SRC-01025]。同一の発行主体(Nokia Bell Labs)の同一ページ内で、日付表現は12月16日・クリスマスイブ(12月24日)・12月23日の三様に食い違っている。本サイトはどれが正しいかを判定せず、この食い違いをそのまま記録する。

論点3: 3人の貢献配分をめぐる位置づけ

論点 根拠・出典 学界(顕彰機関)での位置づけ
誰が「発明」したのか ショックレーは固体物理グループを理論面で率い、自ら電界効果型を考案したが動作せず、実験を主導したバーディーンとブラッテンが点接触型の増幅動作を実証した Computer History Museum・APS・ETHW(3系統一致)[SRC-01028][SRC-01030][SRC-01027] ショックレーは後に、点接触型とは別方式の接合型トランジスタを独自に開発し、ベル研究所は1951年にこれを発表したとされる[SRC-01027]。1956年のノーベル物理学賞は、3人に均等(各1/3)で共同授与されている[SRC-01029]。本サイトは3氏の貢献の軽重を判定しない。

なお、12月23日の実演の場に居合わせた人数についても出典間で記述が割れる: American Physical Societyの解説は、この実演をショックレー・バーディーン・ブラッテンの3名によるものと記す一方[SRC-01030]、ETHW(IEEE History Center運営)の解説はバーディーンとブラッテンの2名によるものと記す[SRC-01027]。本サイトはどちらが正しいかを判定せず、実演の主体を断定しない。

関連する出来事

関連人物

歴史的意義

点接触型トランジスタは、真空管に比べてより信頼性が高く消費電力の少ない増幅・伝送を可能にする装置であり[SRC-01031]、その実証は固体素子による電子工学の出発点になったとされる[SRC-01024]。その後の集積回路・小型化を経て、今日の電子機器の基盤技術になったとされる[SRC-01024]。

現代の視点

真空管に代わる小型・低消費電力の素子という当初の目的は、通話の改善という限られた課題から出発しながら、後に情報化時代全体を支える技術へと発展した(本サイトの整理)[SRC-01024]。同じ出来事について、公式に顕彰する側(IEEE Milestone)でさえ単一の日付を選ばず期間として記録している点は、歴史的な出来事の「日付」を一つに定めることの難しさを示す一例として読むこともできる(本サイトの解釈)。

出典一覧

  1. [SRC-01024] The transistor: 75 years since the famed Nokia Bell Labs invention changed the world/Nokia Corporation(Nokia Bell Labs公式ブログ)(ランクB)
  2. [SRC-01025] 1956 Nobel Prize in Physics/Nokia Corporation(Nokia Bell Labs公式サイト・Awardsアーカイブ)(ランクB)
  3. [SRC-01026] Milestones:Invention of the First Transistor at Bell Telephone Laboratories, Inc., 1947/IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)/ Engineering and Technology History Wiki(ETHW。IEEE History Centerが運営)(ランクA)
  4. [SRC-01027] Bell Demonstrates Transistor/IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)/ Engineering and Technology History Wiki(ETHW。IEEE History Centerが運営)(ランクA)
  5. [SRC-01028] 1947: Invention of the Point-Contact Transistor/Computer History Museum(The Silicon Engine)(ランクA)
  6. [SRC-01029] The Nobel Prize in Physics 1956/The Nobel Foundation / Nobel Prize Outreach(ノーベル財団)(ランクA)
  7. [SRC-01030] Bell Telephone Laboratories/American Physical Society(アメリカ物理学会)(ランクA)
  8. [SRC-01031] Transistor Samples/National Museum of American History(Smithsonian Institution)(ランクA)

本文中の [SRC-nnnnn] はこの一覧の番号を指します。各出典の所在・参照日・信頼度の判定は検証記録で確認できます。

訂正履歴

日付事実主張への変更
12026-09-07あり
22026-09-07あり

訂正の方針は訂正ポリシーに記載しています。各版が事実主張に関わる変更を伴ったかは上表のとおりで、再fact-checkの実施状況は検証記録でご確認いただけます。