1817年世界 19世紀
ニューヨーク証券取引所の前身「New York Stock & Exchange Board」は、1817年3月8日に規約を採択して組織された——1792年5月17日のボタンウッド協定への24名のブローカーの署名とは、別の日付の出来事である
日付と暦
- 原典表記
- 1817年3月8日(グレゴリオ暦)
- 換算
- 1817-03-08(グレゴリオ暦)
- 掲載日
- 3月8日のページ
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概要
1817年3月8日、ニューヨークで証券の売買を仲介していたブローカーたちは、委員会が起草した規約(rules)を可決し、「New York Stock and Exchange Board」という名称の組織を発足させた[SRC-01628][SRC-01629]。この規約は、会長・書記の選出方法、新会員の投票による選任、手数料率、罰金規定などを定めていた[SRC-01628]。この組織は、後にニューヨーク証券取引所(NYSE)へとつながる前身の一つとされる[SRC-01629][SRC-01631]。この1817年の出来事は、1792年5月17日付の、通称「ボタンウッド協定」と呼ばれる誓約書への署名(原本の署名欄には計24件の署名があり、うち2件は別日付である[SRC-02198])とは別の日付の出来事であり、この2つの出来事のどちらを「ニューヨーク証券取引所の創立」と位置づけるかについては、出典間で扱いが分かれている[SRC-01629][SRC-01630][SRC-01631][SRC-01632][SRC-01633](詳細は異説・論争を参照)。
本文
1817年2月25日、ニューヨークのサミュエル・I・ビービーの事務所で会合が開かれ、ネイサニエル・プライムを会長(Prest.)、ジョン・ベンソンを書記(Secry.)としたうえで、「この都市のブローカーの業務をその団体(their Board)で行うための、団体または組合(a board or association of Brokers)を組織することが望ましい」との決議が可決された[SRC-01628]。同じ会合で、規約の草案(articles of association)を作成するための3名からなる委員会の設置も決議された[SRC-01628]。この委員会が起草した規約は、規則本文の冒頭に「1817年2月25日の会合で選任された委員会が報告し、1817年3月8日に可決された(passed 8th March 1817)」ものとして記録されている[SRC-01628]。この規約が可決された1817年3月8日という日付が、本記事の主題である[SRC-01628][SRC-01629][SRC-01631][SRC-01633]。
可決された規約は、会長・書記を毎年3月第2土曜日に投票で選出すること、新会員の選任は投票制とし黒球3個で否決されること(three black balls shall exclude)、議事を行うための定足数を会員の3分の2とすることなどを定めていた[SRC-01628]。手数料率の規定は、公債(Funded Debt)や銀行・保険会社の株式だけでなく、内国・外国の為替手形(Bills of Exchange)、正貨(Specie)、約束手形の取立、抵当を担保とした資金調達にも及んでいた[SRC-01628]。同年3月15日には、架空の売買や契約を行った会員を除名するという条項が全会一致で追加された[SRC-01628]。
取引所公式サイトによれば、この規約は業務の遂行に関する詳細な規則を定め、秩序を乱すブローカーを取り締まるための罰金を科していた[SRC-01629]。ブローカーたちは1日に2回集まり、会長が銘柄名を順に呼び上げ、割り当てられた椅子から入札・売り申し出の声を上げる方式で、30銘柄の株式・債券を取引したとされる[SRC-01629]。この「椅子(chairs)」に由来して、後にNYSEの会員資格を指す「シート(seat)」という語が生まれたと取引所公式サイトは記す[SRC-01629]。なお、原資料の議事録によれば、ウォール街40番地の部屋を年200ドルで借りる決議は、規約可決の1か月後にあたる1817年4月8日になされたものであり、規約が可決された3月8日の会合そのものの開催場所は、本記事が確認した出典の範囲では明記されていない[SRC-01628]。この点について一部の出典は、40番地の部屋の賃借を3月8日の規約採択と同時期の出来事であるかのように記すが[SRC-01633]、原資料の議事録は上記のとおり、これを規約可決から1か月後の4月8日の別の決議として記録している[SRC-01628]。
歴史的背景
この組織の起源は、1792年5月17日にさかのぼる。同日付で、ニューヨークで証券の売買を仲介するブローカーたちが、互いに一定の手数料率で優先的に取引することを誓う短い誓約書に署名したとNYSE・HISTORY等は記す[SRC-01629][SRC-01630][SRC-01632]。この誓約書原本の署名欄には計24件の署名があり、うち2件には1792年11月13日の日付が個別に添えられている[SRC-02198]。この2件についてWikipediaは1794年11月13日と記しており、原本の判読と出典間で年の記載が一致しない[SRC-02198][SRC-01632]。この誓約書は、通称「ボタンウッド協定」と呼ばれる[SRC-01629][SRC-01630][SRC-01632]。NYSEの専属歴史家Peter Aschによれば、この署名を行った地域のブローカーたちは、いわゆる建国の父(Founding Fathers)ではなく、その多くは複数の異なる宗教・出身国を背景に持つ商人たちだったとされる[SRC-01630]。NYU Stern School of BusinessのRichard Sylla名誉教授によれば、この署名は、1791年から1792年にかけての証券市場の混乱(公債価格が数週間で最大30%下落した)を受けて、ニューヨーク州当局が路上での取引や、証券を実際に保有しない者による投機的な取引慣行を禁止したことへの、ブローカー側の対応だったとされる[SRC-01630]。HISTORYの記事によれば、1792年の署名者24名のうち4名は、1817年の合意にも名を連ねていたとされる[SRC-01630]。同記事は、1792年の集団が1817年に「さらに正式化した(formalized further)」と描いている[SRC-01630]。取引所公式サイトは、この1817年の規約採択を、1792年のボタンウッド協定と並べて正式な組織化(a formal organization)の動きとして位置づけている[SRC-01629]。
タイムライン
| 日付(グレゴリオ暦) | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1792年5月17日 | ニューヨークでブローカーたちが、後に「ボタンウッド協定」と呼ばれる誓約書に署名したとNYSE・HISTORY等は記す | [SRC-01629][SRC-01630][SRC-01632] |
| 1792年11月13日 | 誓約書原本の署名欄(計24件)のうち2件に、この日付が個別に添えられている(Wikipediaは1794年と記す) | [SRC-02198][SRC-01632] |
| 1817年2月25日 | サミュエル・I・ビービーの事務所で会合。会長・書記を選任し、規約起草のための委員会を設置する決議を可決 | [SRC-01628] |
| 1817年3月8日 | 委員会が報告した規約(rules)が可決され、「New York Stock and Exchange Board」の名称が採択される(本記事の主題) | [SRC-01628][SRC-01629][SRC-01631][SRC-01633] |
| 1817年3月15日 | 架空の売買・契約を行った会員の除名を定める条項を全会一致で追加 | [SRC-01628] |
| 1817年4月8日 | ウォール街40番地の部屋を年200ドルで賃借する決議 | [SRC-01628] |
| 1863年 | 組織の名称が「New York Stock Exchange」に短縮されたとされる(月日は本記事が確認した出典の範囲では特定できない) | [SRC-01631] |
異説・論争定説のない論点があります
論点は「ニューヨーク証券取引所の創立」をどの出来事に置くかである。第一の見方は、1792年5月17日のボタンウッド協定への署名を「official founding(公式な創立)」とするもので、NYSE公式サイト自身がこの表現を用い[SRC-01629]、Wikipediaも「NYSEはこの署名をfoundingとして祝う」と記す[SRC-01632]。Gale社の企業史参考図書の年表も、1792年を「Formal founding(正式な創立)」、1817年を「名称の採用」、1863年を「名称変更」として明確に区別する[SRC-01631]。第二の見方は、1817年3月8日の規約採択・名称採用こそが規則と会員資格を備えた組織としての実質的な発足であり、NYSE公式サイト自身も、この組織を現在のNYSEの「forerunner(前身)」と位置づけるにとどめ、「official founding」とは別の語を用いている[SRC-01629]。
本記事が確認した出典は、いずれも1792年の署名と1817年の規約採択という2つの事実そのものについては一致しており、対立する学説ではない。相違は、どちらの出来事を「創立」と呼ぶか、位置づけ・強調点の違いである。HISTORYの記事は、1792年の集団が1817年に「さらに正式化した(formalized further)」と記し、1792年の署名者のうち4名が1817年の合意にも名を連ねていたとする[SRC-01630]。MoneyWeekの記事はさらに踏み込んで、「1792年のボタンウッド協定が、1817年3月8日に正式にNew York Stock & Exchange Boardになった(formally became)」と、両者を単一の連続した経過として描く[SRC-01633]。これに対しGale社の年表[SRC-01631]は、3段階(1792年の創立・1817年の名称採用・1863年の名称変更)を区切って記す。本記事はこの相違を独自に解消せず、いずれの位置づけも出典に基づいて併記する。
| 論点 | 説 | 根拠・出典 | 学界での位置づけ |
|---|---|---|---|
| ニューヨーク証券取引所の創立をどこに置くか | 1792年5月17日のボタンウッド協定への署名を「公式な創立」とする | [SRC-01629][SRC-01631][SRC-01632] | NYSE自身・Wikipedia・企業史参考図書が採用する枠組み |
| ニューヨーク証券取引所の創立をどこに置くか | 1817年3月8日の規約採択・名称採用を組織としての実質的な発足とする(本記事の主題) | [SRC-01628][SRC-01629][SRC-01631][SRC-01633] | NYSE自身はこの組織を「forerunner」と位置づけ、企業史参考図書は「名称の採用」として1792年・1863年と区別する |
関連する出来事
- ボタンウッド協定(1792年5月17日)への署名は、本記事の主題である1817年の規約採択の25年前の出来事であり、別の日付の出来事である[SRC-01630]。
- 1817年3月15日の除名条項追加、同年4月8日のウォール街40番地の部屋の賃借は、いずれも3月8日の規約可決に続いた、別の日付の決議である[SRC-01628]。
- 1863年の名称短縮(「New York Stock Exchange」への改称)は、本記事が確認した出典の範囲では月日までは特定できず、1817年の規約採択とは別の出来事である[SRC-01631]。
関連人物
本記事の主題はニューヨーク証券取引所の前身組織そのものであり、個人としての経歴が出典から十分に同定できる人物は見当たらなかった。1817年2月25日の会合で会長・書記に選ばれたネイサニエル・プライム、ジョン・ベンソンの氏名は原資料に記録されているが[SRC-01628]、生没年・経歴等の同定情報は本記事が確認した出典の範囲では確認できなかったため、本記事ではEntityとして登録していない。
歴史的意義
この組織が定めた規約は、投票による会員資格の管理、手数料率の取り決め、秩序維持のための罰金、架空取引の禁止など、後の証券取引所に共通する自主規制の骨格を早い時期に整えたものであった[SRC-01628][SRC-01629]。取引所公式サイトは、この時期に生まれた「呼び上げに応じて割り当てられた椅子に座る」という慣行が、後年の「シート(seat)」という会員資格を指す語の起源になったとする[SRC-01629]。本記事が確認した出典の範囲では、この1817年の組織化と、1792年のボタンウッド協定のどちらを重視するかによって、「ニューヨーク証券取引所の創立」の語られ方が変わってくる(異説・論争を参照)。
現代の視点
MoneyWeek誌は、現在のニューヨーク証券取引所を「時価総額で世界最大の証券取引所」と紹介している[SRC-01633](本記事はこの現在の地位そのものを検証対象とはしない。本サイトの整理)。取引所公式サイトが1792年のボタンウッド協定を「official founding」と位置づける一方で、1817年に採択された規約は、投票による会員選任・手数料率・罰金規定を備えた「組織」としての骨格を与えたとも言える[SRC-01628][SRC-01629]。どちらの日付を「始まり」とみなすかは価値判断を伴う編集上の選択であり、本サイトはいずれか一方のみを正解とはしない(本サイトの整理)。
出典一覧
- [SRC-01628] Constitution of the New York Stock & Exchange Board, 1817(原資料の翻刻)/SEC Historical Society(Virtual Museum and Archive of the History of Financial Regulation)(ランクS)
- [SRC-01629] The History of NYSE/New York Stock Exchange(Intercontinental Exchange, Inc.)(ランクB)
- [SRC-01630] The Surprising Origins of the New York Stock Exchange/HISTORY(A&E Television Networks)(ランクB)
- [SRC-01631] New York Stock Exchange, Inc.(International Directory of Company Histories 所収)/Encyclopedia.com(原著: International Directory of Company Histories, St. James Press/Gale)(ランクB)(複数の資料を収載)
- [SRC-01632] Buttonwood Agreement/Wikipedia(英語版)(ランクC)
- [SRC-01633] 8 March 1817: the New York Stock Exchange is formed/MoneyWeek(ランクC)
- [SRC-02198] Buttonwood Agreement – Original Articles of Agreement founding the New York Stock and Exchange Board(1792年原本の写真画像)/SEC Historical Society(Virtual Museum and Archive of the History of Financial Regulation)。原本はNYSE Euronext(ニューヨーク証券取引所アーカイブズ)の所蔵・著作権表示付きで提供。(ランクS)
本文中の [SRC-nnnnn] はこの一覧の番号を指します。各出典の所在・参照日・信頼度の判定は検証記録で確認できます。
訂正履歴
| 版 | 日付 | 事実主張への変更 |
|---|---|---|
| 1 | 2026-09-27 | あり |
| 2 | 2026-09-27 | あり |
| 3 | 2026-10-07 | あり |
訂正の方針は訂正ポリシーに記載しています。各版が事実主張に関わる変更を伴ったかは上表のとおりで、再fact-checkの実施状況は検証記録でご確認いただけます。