1930年世界 20世紀

冥王星発見、クライド・トンボーによる観測

日付と暦

原典表記
1930年2月18日(グレゴリオ暦)
換算
1930-02-18(グレゴリオ暦)
掲載日
2月18日のページ

この記事の主張は出典に紐づけて検証しています。検証記録を見る

概要

1930年2月18日、アメリカ合衆国アリゾナ州フラッグスタッフのローウェル天文台で、当時24歳のクライド・トンボーが、数日おきに撮影された同じ星域の写真乾板を「ブリンクコンパレータ」という装置で見比べる中で、わずかに位置を変えた光点を検出した[SRC-01482][SRC-01483][SRC-01486]。これが後に冥王星と名付けられる天体である。観測所はこの日から数週間かけて動きを確認したのち、1930年3月13日に発見を公式発表した[SRC-01482][SRC-01483]。発見当時、この天体は太陽系の第9番目の惑星として位置づけられたが[SRC-01481][SRC-01482][SRC-01486]、2006年8月24日、国際天文学連合(IAU)第26回総会の決議により、惑星の定義から外れ「準惑星」に分類された[SRC-01485][SRC-01481][SRC-01484]。この再分類には現在に至るまで異論が示され続けている[SRC-01487][SRC-01488][SRC-01486]。

本文

トンボーは正規の天文学教育を受けたことがなく、カンザス州バーデット近郊の農場で育ちながら、手作りの反射鏡と農機具の部品を組み合わせて自ら望遠鏡を製作した独学の天文愛好家だった[SRC-01482][SRC-01483]。1928年、自作の9インチ望遠鏡で木星と火星を観測したスケッチをローウェル天文台に送ったところ、当時新しい写真望遠鏡を操作できる人材を探していた観測所側の目に留まり、試用の職を得た[SRC-01482][SRC-01483]。

トンボーに課された任務は、天文台の創設者パーシヴァル・ローウェルが1905年から死去する1916年まで探し続けた未知の「第9惑星」(ローウェルは「Planet X」と呼んだ)の捜索を引き継ぐことだった[SRC-01482][SRC-01486]。トンボーは13インチ(33cm)の望遠鏡で夜空を撮影し、同じ星域を数日の間隔を置いて撮った1組の乾板をブリンクコンパレータで高速に切り替えながら、恒星の中に紛れて動く天体がないかを探す作業を続けた[SRC-01483][SRC-01482]。

1930年2月18日の午後遅く、トンボーは1930年1月中旬に撮影された1組の乾板を検分している最中に、位置がわずかに動いた光点に気づいた[SRC-01482]。45分にわたって確認と再確認を重ねたのち、上司に報告した[SRC-01482]。観測所は数週間かけてこの天体の動きを追跡して確認したうえで、1930年3月13日に発見を公式に発表した[SRC-01482][SRC-01483]。その翌日、1930年3月14日付のニューヨーク・タイムズ紙は一面で「太陽系の縁に第9惑星発見」の見出しを掲げて報じた[SRC-01486]。

新天体の名前は、公式発表の翌日にあたる1930年3月14日、英国オックスフォードに住む11歳の少女ヴェネチア・バーニーが朝食の席で提案したものだとされる[SRC-01481][SRC-01486]。祖父が新聞記事を読み上げるのを聞いた少女は、冥界の神にちなんで「プルート(冥王星)」の名を思いつき、祖父を通じてローウェル天文台に伝えられて採用され、1930年5月1日に正式発表された[SRC-01481][SRC-01482][SRC-01486]。

歴史的背景

ローウェル天文台は、ボストンの実業家パーシヴァル・ローウェルが火星研究のために1894年に設立した天文台である[SRC-01482]。ローウェルは天王星・海王星の軌道に見られる乱れを説明できる未知の惑星が太陽系の外縁に存在すると推定し、1905年から「Planet X」の探索を始めたが、1916年に死去するまで発見には至らなかった[SRC-01482][SRC-01486]。ローウェルの遺産を巡る訴訟が決着した1927年以降、観測所は新しい写真望遠鏡を導入して探索を再開し、その任務を担う人材としてトンボーを採用した[SRC-01482]。

発見当時、太陽系には水星から海王星までの8惑星に加えて冥王星を数えた「9惑星」という理解が広く定着し、以後76年にわたって続いた[SRC-01481][SRC-01482][SRC-01484][SRC-01485]。しかしその後、冥王星と同様の軌道域(カイパーベルト)に類似した天体が相次いで発見され、冥王星の惑星としての位置づけが天文学界で議論の対象となった[SRC-01484]。この議論を受け、国際天文学連合は2006年8月24日、チェコ・プラハでの第26回総会で「惑星」の定義を正式に採択し、(a)太陽を周回する、(b)自己重力で静水圧平衡(ほぼ球形)の形状を保つ、(c)軌道近傍から他の天体を排除している、の3条件を満たす天体のみを惑星とする決議を可決した[SRC-01485]。冥王星は(c)の条件を満たさないとされ、ケレスおよび当時「2003 UB313」の仮符号で呼ばれていた天体とともに、新設の「準惑星」の最初のメンバーに分類された[SRC-01485]。

タイムライン

日付(暦種別を明記) 出来事 出典
1905年(グレゴリオ暦) パーシヴァル・ローウェルが未知の「第9惑星(Planet X)」の探索を開始 [SRC-01482][SRC-01486]
1916年11月12日(グレゴリオ暦) ローウェルが死去、探索は一時中断 [SRC-01482]
1929年1月(グレゴリオ暦) クライド・トンボーがローウェル天文台に着任 [SRC-01482]
1930年2月18日(グレゴリオ暦) トンボーが写真乾板の比較検査で冥王星を検出(本記事の配置日) [SRC-01482][SRC-01483][SRC-01484]
1930年3月13日(グレゴリオ暦) ローウェル天文台が発見を公式発表 [SRC-01482][SRC-01483]
1930年5月1日(グレゴリオ暦) 新天体の名称「冥王星(プルート)」が正式に発表 [SRC-01482]
2006年8月24日(グレゴリオ暦) 国際天文学連合が惑星の定義を採択し、冥王星を準惑星に再分類 [SRC-01485][SRC-01484]
異説・論争定説のない論点があります

冥王星の惑星/準惑星をめぐる位置づけは、発見の事実そのものではなく分類基準の適用を巡る科学上の論争であり、決着していない[SRC-01487][SRC-01488][SRC-01486]。国際天文学連合による2006年8月24日の決議(冥王星型天体の定義に関する決議6A)は、賛成237・反対157・棄権17の投票で可決された[SRC-01485]。これに対し、NASAの探査機ニューホライズンズの主任研究者アラン・スターンは、決議直後に「(採決に参加した)天文学者は世界の天文学者の5パーセントにも満たない」「この定義は技術的な理由でひどいものだ」と述べ、決議を覆すための署名運動が惑星科学者の間で広がっていると語った[SRC-01487][SRC-01488]。スターンはまた、決議が要件とする「軌道近傍から他の天体を排除している」という条件について、地球や火星も軌道近傍に多数の小惑星を抱えており、字義通りに適用すれば地球や火星も惑星の条件を満たさなくなると批判した[SRC-01487][SRC-01488]。一方、Caltechのマイク・ブラウンが率いるチームが発見した天体「2003 UB313」も同じ決議で準惑星とされたが、ブラウン自身は決議直後に「冥王星はもう惑星ではない」と述べ、新定義を支持する立場を示した[SRC-01487]。2025年の時点でも、スターンは準惑星という区分を意味をなさないものと考えており、ニューホライズンズによる2015年のフライバイ探査以降、冥王星が氷や山岳・平原を備えた複雑な天体であることが明らかになったことを踏まえ、冥王星を惑星として扱う立場を続けている[SRC-01486]。本サイトが確認した出典の範囲では、国際天文学連合が2006年の決議を正式に撤回したという記録は見当たらなかった。

論点 説 根拠・出典 学界での位置づけ
冥王星は「惑星」か「準惑星」か 準惑星である(IAU公式見解) 2006年8月24日、決議5A(惑星の定義)・決議6A(冥王星型天体の定義)により正式決定。決議5Aは票数を数えず大多数で可決、決議6Aは賛成237・反対157・棄権17で可決 [SRC-01485] 国際天文学連合の公式分類 [SRC-01485]
同上 惑星として扱うべきだとする立場が根強く残る ニューホライズンズ主任研究者アラン・スターンらの批判、決議撤回を求める署名運動 IAU非公式ながら惑星科学者の一部に支持がある立場。決着はしていない [SRC-01487][SRC-01488][SRC-01486]

関連する出来事

関連人物

歴史的意義

冥王星の発見は、天文学の専門教育を受けていない独学の青年が、先人の理論的予測を引き継いで太陽系の新たな天体を検出したという点で、しばしば語り継がれてきた[SRC-01482][SRC-01483]。一方で、この天体の分類上の位置づけは発見から76年後の2006年に大きく変わった。発見当時「太陽系第9番目の惑星」として位置づけられた地位は、その後の観測技術の進展によって同種の天体が次々と見つかったことを受け、国際天文学連合による正式な定義の採択という形で見直された[SRC-01481][SRC-01484][SRC-01485]。この経緯は、天体そのものの性質が変わったわけではなく、天文学界がそれをどう分類するかという基準が変わったことを示す事例として、しばしば取り上げられる[SRC-01484]。

現代の視点

2015年のニューホライズンズによるフライバイ探査は、冥王星が氷の山脈や平原を備えた複雑な天体であることを明らかにした[SRC-01481][SRC-01486]。この探査結果を踏まえ、一部の惑星科学者は「準惑星」という分類が冥王星の科学的な複雑さを十分に反映していないと主張し続けている[SRC-01486][SRC-01487][SRC-01488]。分類名称を巡る論争が今なお続いている一方、冥王星が1930年2月18日にクライド・トンボーによって検出されたという発見の事実そのものは、いずれの立場の出典においても争われていない(本サイトが確認した出典の範囲において)[SRC-01481][SRC-01482][SRC-01483][SRC-01484][SRC-01485][SRC-01486][SRC-01487][SRC-01488]。

出典一覧

  1. [SRC-01481] Pluto: Facts/NASA(アメリカ航空宇宙局)(ランクS)
  2. [SRC-01482] Clyde Tombaugh - Kansapedia/Kansas Historical Society(カンザス歴史協会)(ランクB)
  3. [SRC-01483] Clyde Tombaugh | Discoverer of Pluto, American Astronomer/Encyclopaedia Britannica(ランクB)
  4. [SRC-01484] Pluto | Size, Moons, Temperature, & Facts/Encyclopaedia Britannica(ランクB)
  5. [SRC-01485] IAU 2006 General Assembly: Result of the IAU Resolution votes/International Astronomical Union(国際天文学連合、IAU)(ランクS)
  6. [SRC-01486] What Makes Pluto So Intriguing/TIME(ランクB)
  7. [SRC-01487] Scientists decide Pluto's no longer a planet/NBC News(Space.com記事の転載)(ランクB)
  8. [SRC-01488] New planet definition sparks furore/New Scientist(ランクB)

本文中の [SRC-nnnnn] はこの一覧の番号を指します。各出典の所在・参照日・信頼度の判定は検証記録で確認できます。

訂正履歴

版日付事実主張への変更
12026-09-18—
22026-09-18あり
32026-09-18あり

訂正の方針は訂正ポリシーに記載しています。各版が事実主張に関わる変更を伴ったかは上表のとおりで、再fact-checkの実施状況は検証記録でご確認いただけます。