1922年世界 20世紀
1922年2月2日、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』がパリで刊行された——その刊行日は、ジョイスの40歳の誕生日だった
日付と暦
- 原典表記
- 1922年2月2日(グレゴリオ暦)
- 換算
- 1922-02-02(グレゴリオ暦)
- 掲載日
- 2月2日のページ
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概要
1922年2月2日、ジェイムズ・ジョイスの小説『ユリシーズ』が、パリの書店シェイクスピア・アンド・カンパニー店主シルヴィア・ビーチの刊行によって世に出た[SRC-01352][SRC-01353][SRC-01354]。この日はジョイスの40歳の誕生日だった[SRC-01353][SRC-01354]。本作は単行本化に先立ち米国の文芸誌The Little Reviewに連載され[SRC-01352][SRC-01353]、1920年12月まで続いたが[SRC-01353]、発行人2名は猥褻物頒布の罪で有罪となり[SRC-01352][SRC-01354][SRC-01355]、以後の掲載を禁じられた[SRC-01354][SRC-01355]。米国内での全巻の正式な刊行は、1933年12月6日の連邦地方裁判所の判断を経て1934年に実現した[SRC-01352][SRC-01354][SRC-01357]。
本文
シルヴィア・ビーチは1921年3月、自らの書店の刊行物として『ユリシーズ』の出版を申し出て、ジョイスはこれを受け入れた[SRC-01354]。米国での出版の道が閉ざされていたためである[SRC-01355]。本作は1918年3月から1920年12月までThe Little Reviewに連載されたが[SRC-01353]、郵政公社は掲載号のうち4号を押収・焼却した[SRC-01352]。1921年2月、ニューヨークの3判事によるThe Little Review裁判で[SRC-01354]、発行人マーガレット・アンダーソンとジェーン・ヒープは猥褻物頒布の罪で有罪となり[SRC-01352][SRC-01354][SRC-01355]、各50ドルの罰金を科され[SRC-01352][SRC-01354][SRC-01355]、以後の連載を禁じられた[SRC-01354][SRC-01355]。米国での輸入禁止はその後も続いたが、出版社ランダムハウスの依頼を受けた弁護士モリス・アーンストが搬入差止め訴訟を組み立て[SRC-01355]、1933年12月6日、ウールジー判事が同書はわいせつに当たらないとして輸入を認める決定を下した[SRC-01354][SRC-01357]。1934年1月17日にランダムハウスが正式刊行し[SRC-01355]、同年、米国第2巡回区控訴裁判所も2対1でこの判断を支持した[SRC-01354][SRC-01355]。
歴史的背景
『ユリシーズ』は、1921年のThe Little Review裁判では「ナウシカア」挿話の性的な場面の描写が起訴の直接の契機となった[SRC-01355]。当時の猥褻法の基準は1868年の英国判例レジーナ対ヒックリン事件に由来し、作品全体でなく問題視された箇所のみを取り出して判断する手法だった[SRC-01355]。『ユリシーズ』は英国・アイルランド・米国で10年以上発禁とされ、英国税関と米国郵政公社が最初の2版の大半を押収・破棄した[SRC-01356]。ウールジー判事の判断は、この旧来の基準を退け作品全体で判断する新たな枠組みを示した[SRC-01355]。
タイムライン
| 日付(グレゴリオ暦) | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1918年3月 | The Little Review、『ユリシーズ』の連載を開始 | [SRC-01353] |
| 1921年2月 | The Little Review裁判。発行人2名が猥褻物頒布の罪で有罪、各50ドルの罰金と以後の連載禁止 | [SRC-01352][SRC-01354][SRC-01355](有罪・各50ドルの罰金)/[SRC-01354][SRC-01355](期日・以後の連載禁止) |
| 1921年3月 | シルヴィア・ビーチが刊行を申し出、ジョイスが受諾 | [SRC-01354] |
| 1922年2月2日 | 『ユリシーズ』、パリで刊行(ジョイスの40歳の誕生日) | [SRC-01352][SRC-01353][SRC-01354](刊行)/[SRC-01353][SRC-01354](誕生日) |
| 1933年12月6日 | ウールジー判事、米国内への搬入を認める決定 | [SRC-01354][SRC-01357] |
| 1934年1月17日 | ランダムハウスが米国内で正式刊行 | [SRC-01355] |
| 1934年 | 米国第2巡回区控訴裁判所、2対1でウールジー判事の判断を支持 | [SRC-01354][SRC-01355] |
異説・論争定説のない論点があります
複数の出典間で記述の精度・数値が食い違う4点を開示する。
| 論点 | 説 | 根拠・出典 | 学界での位置づけ |
|---|---|---|---|
| ウールジー判事の判断日 | 1933年12月6日 | famous-trials.com年表ページ・判決文原文(一致) | [SRC-01354][SRC-01357] |
| 同上 | 1933年12月7日 | famous-trials.comの別ページ(同一著者の物語形式ページ) | [SRC-01355]。判決文原文(一次資料)が「12月6日」と明記し同一著者の年表ページとも一致するため、「12月7日」は同一サイト内の誤記と判断した(R6-4) |
| The Little Review連載の規模 | 「18の独立した部分」 | The James Joyce Centre | [SRC-01353] |
| 同上 | 「11の挿話」 | famous-trials.com(同著者の物語形式ページ) | [SRC-01355]。数え方の単位(雑誌掲載号数か作品構成上の挿話数か)が異なる可能性が高いが出典はその対応関係を明示しないため、統一せず両方を出典に紐づけて開示する |
| The Little Review連載の中断時期 | 1920年(訴追と連載の事実上の終了) | Modernism Lab, Yale University | [SRC-01356]。"publication was interrupted in 1920 when its publishers were prosecuted for obscenity"と記す。連載自体は1920年12月まで掲載が続いた[SRC-01353] |
| 同上 | 1921年2月(有罪判決・以後の連載禁止命令) | famous-trials.com年表ページ | [SRC-01354]。有罪判決とそれに伴う「以後の連載禁止」命令の期日である。訴追・連載の事実上の終了(1920年)と、有罪判決・命令(1921年2月)は別の出来事であり、統一せず両方を出典に紐づけて開示する |
| 「20世紀最高の小説」型の評価 | An Post(アイルランド郵政公社)CEOの発言として紹介 | The James Joyce Centre | [SRC-01353]。特定個人の発言の紹介であり本サイト独自の評価ではない |
| 同上 | Britannica自身は「世界文学およびモダニズム運動の傑作」["a masterpiece of world literature and of the Modernist movement"]と評する | Encyclopaedia Britannica | [SRC-01352]。事典自身の評として帰属形で紹介するにとどめる |
関連する出来事
- 1919年、シルヴィア・ビーチはパリに書店兼貸本屋シェイクスピア・アンド・カンパニーを開き、その3年後に『ユリシーズ』を自らの刊行物として世に出した(本記事「概要」参照)[SRC-01353]。
- 1921年2月[SRC-01354][SRC-01355]、米国の文芸誌The Little Reviewの発行人2名が、『ユリシーズ』連載を理由に猥褻物頒布の罪で有罪となった(本記事「本文」参照)[SRC-01352][SRC-01354][SRC-01355]。
関連人物
- ジェイムズ・ジョイス(じぇいむず・じょいす): 『ユリシーズ』の著者[SRC-01352][SRC-01353]。刊行日1922年2月2日は40歳の誕生日にあたった[SRC-01353][SRC-01354]。
- シルヴィア・ビーチ(しるゔぃあ・びーち): 書店シェイクスピア・アンド・カンパニーの店主で、本作の刊行者[SRC-01352][SRC-01353][SRC-01354]。
歴史的意義
米国内への『ユリシーズ』の輸入を認めたウールジー判事の判断は、1868年のヒックリン基準に代わり、作品全体として読者に与える影響を基準とする新たな枠組みを示した[SRC-01355]。この枠組みは1934年の第2巡回区控訴裁判所判断でも支持された[SRC-01354][SRC-01355]。famous-trials.comは、この判断を「半世紀以上続いた抑圧的な猥褻基準を覆し、真摯な作家が率直さ・写実性・誠実さをもって物語を語ることを認める基準に置き換えたもの」["an opinion which undid a repressive obscenity test which had stood for more than half a century and replaced it with one which allowed serious writers to tell stories with candor, realism, and honesty"]と評している[SRC-01355]。
現代の視点
The James Joyce Centreは、刊行100周年にあたってアイルランド郵政公社(An Post)が記念切手を発行したことを紹介し、同社CEOデイヴィッド・マクレドモンドの発言として「20世紀最高の小説だとする評価は今も色あせない」["The claims for Ulysses as the greatest novel of the 20th Century, and the first great modern novel, remain vibrant."]という言葉を伝えている[SRC-01353]。本記事の射程は、1922年2月2日の刊行とそれに至る連載・裁判の経緯、および1933年〜1934年の米国内での刊行の経緯に限定する。作品そのものの詳細な物語内容や、後世の文学史的評価の広がりについては、本記事の主題外として扱わない(本サイトの整理)。
出典一覧
- [SRC-01352] Ulysses|Book, Publication Date, Summary, What Is It About, Banned Book, Characters, & Facts/Encyclopaedia Britannica, Inc.(ランクB)
- [SRC-01353] Ulysses|The James Joyce Centre/The James Joyce Centre(ランクA)
- [SRC-01354] Ulysses Obscenity Cases: A Chronology/Famous Trials (UMKC School of Law), by Professor Douglas O. Linder(ランクB)
- [SRC-01355] The Two Ulysses Trials: An Account/Famous Trials (UMKC School of Law), by Professor Douglas O. Linder(ランクB)
- [SRC-01356] Ulysses (Modernism Lab, Yale University)/Modernism Lab, Yale University(ランクA)
- [SRC-01357] United States v. One Book Called "Ulysses", 5 F. Supp. 182 (S.D.N.Y. 1933)/Casetext(原文: 米国ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所判決文, 5 F. Supp. 182)(ランクA)
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訂正履歴
| 版 | 日付 | 事実主張への変更 |
|---|---|---|
| 1 | 2026-09-17 | あり |
| 2 | 2026-09-17 | あり |
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