エレノア・ルーズベルトが議長を務めた委員会の草案が、1948年12月10日、パリで世界人権宣言として採択された——それは、法的拘束力を持たない宣言だった
日付と暦
- 原典表記
- 1948年12月10日(グレゴリオ暦)
- 換算
- 1948-12-10(グレゴリオ暦)
- 掲載日
- 12月10日のページ
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概要
1948年12月10日、国連総会第3会期第183回本会議で、世界人権宣言が決議217号(III)Aにより採択された[SRC-00916][SRC-00920](会場は、国連法務局の映像記録カタログによればパリのシャイヨ宮[SRC-00920])。採決の結果は、賛成48、反対0、棄権8だった[SRC-00920]。起草委員会を主導したのは、1946年から国連人権委員会の議長を務めていたアメリカ代表エレノア・ルーズベルトであり、フランスのルネ・カッサンが最初の草案を書き、レバノンのマリク、中国の張彭春らが議論を交わした[SRC-00923][SRC-00924]。宣言は、締約国に義務を課す法的拘束力を持つ条約としてではなく、拘束力を持たない宣言として採択された[SRC-00920][SRC-00924]。前日の12月9日には、同じ国連総会第3会期の会場で、集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約が採択されていた[SRC-00912][SRC-00913]。
本文
経済社会理事会は1946年2月15日、常設の人権委員会の機能・範囲を検討する「核」委員会を設置した[SRC-00920]。同年4月の会合では、中国のシア(C. L. Hsia)の推薦により、アメリカ代表エレノア・ルーズベルトがこの委員会の議長に選ばれた[SRC-00924]。同年秋に発足した常設の人権委員会(18か国代表からなる)も、引き続きルーズベルトを議長に選出し、その下に8か国代表からなる起草委員会が設けられた[SRC-00923][SRC-00924]。起草委員会では、フランスのルネ・カッサンが最初の草案を書き、レバノンのマリクが報告者、中国の張彭春が副議長を務め、カナダのハンフリーが草案の骨子を用意した[SRC-00923]。ルーズベルトの回想によれば、張とマリクは多元論とトマス・アクィナスの哲学を巡って議論を交わし、張が事務局に儒教研究を勧める一幕もあったという[SRC-00923]。
起草された宣言案は、1948年9月の総会第142回本会議で第三委員会に付託され、同委員会は81回の会合と168件の修正決議案の審議を経て、賛成29・反対0・棄権7により宣言案を採択した[SRC-00920]。この報告は総会第180回〜第183回本会議(12月9日・10日)で検討され、12月10日の第183回本会議で、決議217号(III)Aとして、賛成48・反対0・棄権8により採択された[SRC-00916][SRC-00920]。
歴史的背景
起草委員会は当初、義務を課す条約とする案と、拘束力を持たない宣言とする案の両方を人権委員会に提出していた[SRC-00920]。最終的に総会が採択したのは、拘束力を持たない宣言としての形式だった[SRC-00920][SRC-00924]。ルーズベルト自身も、宣言には法的な効力はないが道義的な重みを持たせるべきだと考えていた[SRC-00924]。採択の前日、ルーズベルトは身内への私信に、アラブ諸国は宗教上の理由から、ソ連は政治上の理由から採決を渋るかもしれないと記していた[SRC-00924]。実際の採決では反対はゼロだったが、8か国が棄権した[SRC-00920][SRC-00923]。
タイムライン
| 日付(暦種別を明記) | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1946-02-15(グレゴリオ暦) | 経済社会理事会が、常設の人権委員会の機能・範囲を検討する「核」委員会を設置 | [SRC-00920] |
| 1946年(グレゴリオ暦) | 常設の国連人権委員会が発足。エレノア・ルーズベルトを議長に選出 | [SRC-00924] |
| 1947-06-09(グレゴリオ暦) | レイク・サクセスで、起草委員会の初会合が開かれる | [SRC-00920] |
| 1948-09-24(グレゴリオ暦) | 総会第142回本会議、宣言案を第三委員会に付託 | [SRC-00920] |
| 1948-12-04〜12-07(グレゴリオ暦。第174〜179回会合のいずれか) | 第三委員会、賛成29・反対0・棄権7で宣言案を採択(第178回会合) | [SRC-00920] |
| 1948-12-09(グレゴリオ暦・関連) | 同じ国連総会第3会期の第179回本会議で、集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約が採択される | [SRC-00912][SRC-00913] |
| 1948-12-10(グレゴリオ暦) | 総会第183回本会議、決議217号(III)Aにより世界人権宣言を採択(賛成48・反対0・棄権8) | [SRC-00916][SRC-00920] |
異説・論争 — 定説のない論点があります(開く)
宣言の法的形式(条約か、拘束力を持たない宣言か)は、起草過程で争われた論点であり、現代の個別の人権適用を巡る論争ではなく、1948年当時の国際法起草史として整理する(調査範囲: 本記事は国連人権委員会・第三委員会での起草過程の一次資料・国連自身の解説に限定して調査した。棄権した8か国自身が示した公式な説明は、この調査範囲には含まれていない——本記事ではエレノア・ルーズベルト個人の採択前日時点の私信での見立てのみを、帰属を明示した参考情報として本文・関連人物欄に記載する)。
| 論点 | 説 | 根拠・出典 | 学界での位置づけ |
|---|---|---|---|
| 宣言は、義務を課す法的拘束力のある条約とすべきか、拘束力を持たない宣言とすべきか | 一部の代表は、義務を課す法的拘束力のある条約とすることを望んだ | [SRC-00920] | 起草委員会は当初、条約案と宣言案の両方を人権委員会に提出していた(国連法務局の機関解説) |
| 同上 | 最終的に総会が採択したのは、拘束力を持たない宣言の形式だった | [SRC-00916][SRC-00920][SRC-00924] | この選択は、後により拘束力のある規約を別途採択する二段階の枠組みにつながったと、国連法務局サイト掲載の解説(Cançado Trindade執筆のIntroductory Note)は位置づける[SRC-00920] |
関連する出来事
- 1948年12月9日、同じ国連総会第3会期の会場で、集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約が採択された(1日前の出来事)[SRC-00912][SRC-00913]
関連人物
- エレノア・ルーズベルト(えれのあ・るーずべると): 1946年から国連人権委員会の議長を務め、宣言の起草委員会を主導したアメリカ代表[SRC-00923][SRC-00924]。採択前日の私信で、アラブ諸国は宗教上の理由、ソ連は政治上の理由から採決を渋るかもしれないと記していた[SRC-00924]
- ハンサ・メータ(はんさ・めーた): 国連公式サイトにより、宣言第1条の文言を「すべての人類(All men)」から「すべての人間(All human beings)」へ変更させたことで広く評価されている(伝聞的な帰属)と記されるインドの人物[SRC-00922]
歴史的意義
宣言自体は法的拘束力を持たない文書として採択された[SRC-00920][SRC-00924]。より拘束力のある規約とあわせて「国際人権章典」を構成することが、起草段階から構想されていた[SRC-00920]。国連は今日、この宣言が70以上の人権条約の採択を後押ししたと位置づけている[SRC-00922]。
現代の視点
宣言第1条は「すべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」(原文: All human beings are born free and equal in dignity and rights)と定める[SRC-00921]。この主語は当初「すべての人類(All men)」だったとされ、国連公式サイトはインドのハンサ・メータの働きかけによる変更だと伝える(伝聞的な帰属であり、本サイトも断定はしない)[SRC-00922]。拘束力を持たない宣言として出発した文書を、その後の人権条約群の起点として位置づけるのは国連自身の解釈であり、本サイトの評価ではない[SRC-00922]。
出典一覧
- [SRC-00912] Resolution 260 (III) A: Adoption of the Convention on the Prevention and Punishment of the Crime of Genocide, and text of the Convention — Official Records of the General Assembly, Third Session/United Nations(国連総会公式記録・国連デジタル文書システムODS)(ランクS)
- [SRC-00913] Convention on the Prevention and Punishment of the Crime of Genocide — United Nations Audiovisual Library of International Law(Historic Archives)/United Nations Audiovisual Library of International Law(国連法務局)(ランクA)(複数の資料を収載)
- [SRC-00916] Resolution 217 (III) A: Universal Declaration of Human Rights — Official Records of the General Assembly, Third Session/United Nations(国連総会公式記録・国連デジタル文書システムODS)(ランクS)
- [SRC-00920] Universal Declaration of Human Rights — United Nations Audiovisual Library of International Law(Historic Archives)/United Nations Audiovisual Library of International Law(国連法務局)(ランクA)(複数の資料を収載)
- [SRC-00921] Universal Declaration of Human Rights — The Avalon Project, Lillian Goldman Law Library, Yale Law School/The Avalon Project, Lillian Goldman Law Library, Yale Law School(ランクA)
- [SRC-00922] Universal Declaration of Human Rights | United Nations/United Nations(ランクA)
- [SRC-00923] History of the Declaration | United Nations/United Nations(ランクA)
- [SRC-00924] Eleanor Roosevelt and the Universal Declaration of Human Rights | Eleanor Roosevelt Papers Project, The George Washington University/Eleanor Roosevelt Papers Project, The George Washington University(ランクA)
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訂正履歴
| 版 | 日付 | 事実主張への変更 |
|---|---|---|
| 1 | 2026-09-06 | あり |
| 2 | 2026-09-06 | あり |
| 3 | 2026-09-06 | あり |
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