アポロ8号は、月を周回しながらクリスマスイブに創世記を読み上げた——NASAは「有人初の月周回ミッション」と位置づける

日付と暦

原典表記
1968年12月24日(グレゴリオ暦)
換算
1968-12-24(グレゴリオ暦)
掲載日
12月24日のページ

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概要

1968年12月24日、月を周回中のアポロ8号から、船長フランク・ボーマン、司令船操縦士ジェームズ・A・ラヴェル・ジュニア、月着陸船操縦士ウィリアム・A・アンダースの3人が、世界に向けたテレビ中継を行った[SRC-01033][SRC-01036]。月周回第9周回中に行われたこの27分間の放送で、乗員は交代で旧約聖書「創世記」の冒頭10節を朗読し、ボーマンが「アポロ8号の乗員一同より、おやすみなさい、幸運を、そしてメリー・クリスマスを。神のご加護がありますように——地球にいるすべての皆さんに(And from the crew of Apollo 8, we close with good night, good luck, a merry Christmas, and God bless all of you—all of you on the good Earth.)」という言葉で締めくくった[SRC-01036][SRC-01038]。NASAはこの飛行を「有人としては初の月周回ミッション」と位置づけている[SRC-01032][SRC-01037]。この放送に先立つ第4周回では、アンダースが月の地平線から昇る地球の姿をカメラに収めており、これは後に「地球の出(Earthrise)」として知られる、アポロ計画を代表する写真の一つとなった[SRC-01033][SRC-01034]。

本文

アポロ8号は1968年12月21日、米国フロリダ州のケネディ宇宙センター第39発射施設AからサターンVロケットで打ち上げられた[SRC-01032][SRC-01037]。この打ち上げは、NASA・スミソニアン国立航空宇宙博物館のいずれによっても、有人によるサターンVロケットとしては初の飛行と位置づけられている[SRC-01037][SRC-01035]。打ち上げ時刻は、本サイトが確認できた範囲ではスミソニアン・マガジンに掲載された、同博物館アポロ・コレクション学芸員による記事のみが「米東部標準時午前7時51分」と明記しており、他の登録出典は日付のみを記す[SRC-01038]。

3日間の飛行を経て月へ到達したアポロ8号は、月の裏側で主エンジンを噴射する月周回軌道投入(LOI)マヌーバを実施し、70×195マイルの楕円軌道に入った。このマヌーバの間、地球からの通信は32分37秒にわたって途絶えた[SRC-01033]。第2周回終了時、乗員は再びエンジンを噴射して軌道を70マイルの円軌道に整えた[SRC-01033]。

第4周回に入ろうとしていたとき、ボーマンが機体を回転させる操作をしている最中に、月の地平線の向こうから地球が姿を現した[SRC-01033][SRC-01034]。この瞬間は、オンボード・テープレコーダーの音声に記録されている[SRC-01034]。「Oh my God, look at that picture over there! There's the Earth comin' up. Wow, is that pretty!」とアンダースが声を上げ、ボーマンは当初「Hey don't take that, it's not scheduled.」(予定にない、撮るな)と応じたが、アンダースはカラーフィルムへの交換を急かし、写真に収めた[SRC-01034]。地球の出はそれ以前の3回の周回でも起きていたが、乗員はいずれも視認しておらず、この回は機体の姿勢変更のタイミングがちょうど重なったことで、初めてアンダースの側面窓に入った[SRC-01034]。

月周回第9周回、乗員は最後のテレビ中継を開始した[SRC-01033]。放送内容の考案には、NASA広報部と米広報庁(USIA)の科学顧問サイモン・バーギンが関わり、バーギンの友人夫妻のうち妻クリスティン・レイティンが「創世記の冒頭から読んではどうか」と提案したとされる[SRC-01038]。この案は耐火紙にタイプされ、フライトプランに組み込まれた[SRC-01038]。放送ではカメラが月面を映し、乗員それぞれが月についての感想を語った[SRC-01033][SRC-01036][SRC-01038]。続けてアンダースが「For all the people back on Earth, the crew of Apollo 8 have a message that we would like to send to you」と切り出した[SRC-01038]。アンダースが創世記の朗読を読み始め、3人が交代で冒頭10節を朗読し、ボーマンが締めくくりの言葉を述べた[SRC-01033][SRC-01036][SRC-01038]。

歴史的背景

アポロ8号は、月周回という目標が1968年8月に決定され、乗員の訓練期間は4か月にとどまった[SRC-01039]。NASA広報部副長官ジュリアン・シアーは、打ち上げに先立ちボーマンに電話し、クリスマスイブに月を周回していることになると伝えたうえで、「何か適切なことを言ってほしい」とだけ指示したという[SRC-01038][SRC-01039]。この曖昧な指示を受け、乗員とNASA・USIA関係者の間で放送内容が検討され、最終的に創世記の朗読が選ばれた経緯は、本文に記したとおりである[SRC-01038]。

タイムライン

日付(暦種別を明記) 出来事 出典
1968年12月21日(グレゴリオ暦) ケネディ宇宙センター第39発射施設AからサターンVロケットで打ち上げ(有人としては初のサターンV飛行) [SRC-01032][SRC-01035][SRC-01037]
1968年12月24日(グレゴリオ暦) 月周回軌道投入(LOI)マヌーバ実施。有人として初の月周回ミッションとなる [SRC-01032][SRC-01033][SRC-01037]
1968年12月24日 第4周回(グレゴリオ暦) アンダースが「地球の出」を撮影 [SRC-01033][SRC-01034]
1968年12月24日 第9周回(グレゴリオ暦) 27分間のテレビ中継。乗員が創世記1章1-10節を朗読 [SRC-01033][SRC-01036][SRC-01038]
1968年12月25日(ヒューストン時間・グレゴリオ暦) 飛行開始89時間19分後、地球帰還軌道投入(TEI)マヌーバを実施し帰路へ [SRC-01033]
1968年12月27日(グレゴリオ暦) 太平洋上に着水し帰還 [SRC-01032][SRC-01035]
異説・論争 — 定説のない論点があります(開く)

視聴者数の食い違い: 創世記朗読の視聴者数について、NASA History Program記事とスミソニアン・マガジン記事はいずれも「推定10億人、64か国」と記す[SRC-01033][SRC-01038]。一方、米国立公文書館の展示ページは「5億人」と記しており、数値が一致しない[SRC-01036]。本サイトが確認した出典の範囲では、いずれの数値がより正確かを判断する根拠はなく、本サイトが本文で扱う2つの数値を示す。

創世記朗読をめぐる訴訟: この創世記朗読は、放送当時から論争の対象となった。米公共放送PBSの記事は、この朗読が「後に無神論活動家(同記事内の表記は"Madeline Murray O'Hare")により非難され、同人はNASAを相手取り訴訟を提起した」と記している[SRC-01039]。一般に知られる氏名の綴りは「マダリン・マレー・オヘア(Madalyn Murray O'Hair)」であり、PBS記事内の綴りとは異なるが、本サイトは氏名の綴りの違いではなく、訴訟が提起された事実そのものを記す。訴訟の係属裁判所・提起時期・具体的な判決内容については、本サイトが確保できた出典の範囲では確認できていない。この論争は、当時の政教分離をめぐる議論として記録するものであり、現代における政教分離をめぐる別の論争へは接続しない。

「初」の限定語のページ内・機関間の違い: NASAの複数のページは「有人としては初の月周回ミッション(the first crewed lunar orbit mission)」という限定語つきの表現を用いる[SRC-01032][SRC-01033][SRC-01037]。ただし、この限定語は同一機関の中でも一様ではない。NASA公式ミッションページは、アンダースの略歴では「NASA's first crewed lunar orbit mission」と限定語つきで記す一方、ミッション概要文では「Frank Borman, Jim Lovell, and Bill Anders were the first humans to orbit the Moon」と限定語のない表現を用いている[SRC-01032]。同様に、NASAの「今週のNASA史」記事は「the first crewed lunar orbit mission」という表現と、「the first U.S. crewed mission — Apollo 8 — that circumnavigated the Moon」という米国限定の表現を同一記事内に併存させている[SRC-01037]。スミソニアン国立航空宇宙博物館は「月への往復を果たした初のミッション」「月への初の有人ミッション」という、往復飛行全体を指す表現を用いる[SRC-01035]。両者の限定語の範囲は完全には一致しない。また、NASAのサイエンスサイトの動画でも、「crewed」等の限定語を伴わない「人類として初めて月を周回した(first humans to orbit the Moon)」という簡略な表現が用いられている[SRC-01034]。米国立公文書館は、この飛行について優先権の命題そのものを述べていない[SRC-01036]。本サイトが確認した出典の範囲(米国政府・博物館・公文書館・放送機関の資料に限られる)では、この優先権に対抗する先行主張(他国による有人での月周回飛行の先行実施等)は確認されていない。

論点 根拠・出典 学界での位置づけ
創世記朗読の視聴者数 推定10億人・64か国 NASA History Program・スミソニアン・マガジン [SRC-01033][SRC-01038]
(同上) 5億人 米国立公文書館 [SRC-01036]
「有人初の月周回」の限定語 「有人としては初の月周回ミッション」(crewed lunar orbit) NASA(複数ページで使用。ただし同一ページ内に限定語のない表現も併存) [SRC-01032][SRC-01033][SRC-01037]
(同上) 「月への往復を果たした初のミッション」(範囲がより広い) スミソニアン国立航空宇宙博物館 [SRC-01035]

関連する出来事

関連人物

歴史的意義

スミソニアン国立航空宇宙博物館は、アポロ8号の成功が翌年のアポロ11号による人類初の月面着陸への道を開いたと位置づけている[SRC-01035]。また、この飛行で撮影された「地球の出」の写真は、国際天文学連合が2018年に月面のクレーターに「Anders' Earthrise」という名称を与えるなど、アポロ計画を代表する写真として記憶され続けている[SRC-01034]。創世記朗読については、放送当時から論争の対象となった一方で、多数の視聴者から好意的な反応が寄せられたとされる(異説・論争欄参照)[SRC-01038]。

現代の視点

NASAは現在も、複数の公式ページで「有人としては初の月周回ミッション」という限定語つきの表現でアポロ8号を位置づけているが[SRC-01032][SRC-01033][SRC-01037]、この限定語は同一ページの中でも一様ではない。NASA公式ミッションページはアンダースの略歴では限定語つきの表現を用いる一方、ミッション概要文では限定語のない表現を用いており[SRC-01032]、「今週のNASA史」記事も限定語つきの表現と米国限定の表現を同一記事内に併存させている[SRC-01037]。同じNASAのサイエンスサイトの動画では、限定語を伴わない簡略な「人類として初めて月を周回した」という表現も用いられている[SRC-01034]。こうした表現の揺れは、優先権を正面から論じる文脈とそうでない文脈とで、機関自身の言葉遣い——しかも同一ページの内部でさえ——変わりうることを示している。

出典一覧

  1. [SRC-01032] Apollo 8/NASA(ランクA)
  2. [SRC-01033] 50 Years Ago: Apollo 8 in Lunar Orbit/NASA(NASA History Program/執筆: John Uri, Johnson Space Center)(ランクA)
  3. [SRC-01034] The Story Behind Apollo 8's Famous Earthrise Photo/NASA(science.nasa.gov/制作: NASA's Scientific Visualization Studio/ナレーション: Andrew Chaikin)(ランクA)
  4. [SRC-01035] Apollo 8/National Air and Space Museum, Smithsonian Institution(ランクA)
  5. [SRC-01036] Crew of Apollo 8 - A View from Lunar Orbit, 1968 (Eyewitness: American Originals from the National Archives)/National Archives and Records Administration (NARA)(ランクA)
  6. [SRC-01037] This Week in NASA History: Apollo 8 Launches – Dec. 21, 1968/NASA(ランクA)
  7. [SRC-01038] How Apollo 8 Delivered Christmas Eve Peace and Understanding to the World/Smithsonian Magazine(著者: Teasel Muir-Harmony, National Air and Space Museum, Apollo Collectionキュレーター)(ランクB)
  8. [SRC-01039] Telecasts from Apollo 8 (American Experience: Race to the Moon)/PBS(American Experience/原資料頁: pbs.org/wgbh/amex/moon/peopleevents/e_telecasts.html)(ランクB)

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訂正履歴

日付事実主張への変更
12026-09-07あり
22026-09-07あり

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