アポロ17号は、真夜中に打ち上げられた——アポロ計画、最後の有人月面着陸ミッションへ
日付と暦
- 原典表記
- 1972年12月7日(グレゴリオ暦)
- 換算
- 1972-12-07(グレゴリオ暦)
- 掲載日
- 12月7日のページ
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概要
1972年12月7日、米東部標準時では日付が変わったばかりの午前0時33分00秒(グリニッジ標準時では同日05時33分00秒)、アポロ17号を載せたサターンVロケットが、フロリダ州のケネディ宇宙センター第39発射施設(Launch Complex 39)から打ち上げられた[SRC-00897]。乗員は船長ユージン・A・サーナン、司令船操縦士ロナルド・E・エヴァンズ、月着陸船操縦士ハリソン・H・シュミットの3人だった[SRC-00896][SRC-00897][SRC-00898]。打ち上げカウントダウンはT-30秒の時点で自動シーケンサーの故障により停止し、2時間40分の遅延を経てからの、暗闇の中での打ち上げとなった[SRC-00897]。NASA自身のミッション報告書は、打ち上げを記述する冒頭でこの飛行を「the final Apollo mission」(最後のアポロミッション)と呼んでおり[SRC-00897]、NASAの現行の公式ミッションページも「The Apollo Program's last lunar landing mission」(アポロ計画最後の月面着陸ミッション)と位置づけている[SRC-00896]。スミソニアン国立航空宇宙博物館も、このミッションを「The last Apollo mission」と呼んでいる[SRC-00898]。
本文
打ち上げに向けたカウントダウンは順調に進んでいたが、T-30秒の時点で自動カウントダウン・シーケンサーに故障が発生し、ホールド(一時停止)がかかった[SRC-00897]。カウントは何度か再開され、最終的に2時間40分の遅延を経て打ち上げに至った[SRC-00897]。NASAのミッション報告書は、この遅延について「アポロ計画において機材の故障が原因となった唯一の打ち上げ遅延だった」と記している[SRC-00897]。この遅延の結果、打ち上げ方位角は北から東へ72度の当初計画から北から東へ91度30分へ更新され、92.5マイル×91.2マイルの地球周回軌道が達成された[SRC-00897]。機体は月遷移軌道投入マヌーバまでの約3時間、この地球周回軌道にとどまった[SRC-00897]。月遷移航行の時間は打ち上げ機の誘導システムによって自動的に短縮され、事前計画どおりの月到着時刻が維持されたという[SRC-00897]。
ミッション報告書は、この打ち上げを従来のアポロ計画の打ち上げと比較したときの主な相違点は、ホールドを除けば夜間打ち上げに伴うものだったと記す[SRC-00897]。乗員は、リフトオフの数秒前から数秒後まで、ランデブー窓とブースト保護カバーのハッチ窓の切り欠きを通じて第1段(S-IC)の着火を視認できたという[SRC-00897]。第1段の分離時には明るい閃光が見え、脱出塔(escape tower)の投棄は昼間よりも劇的だったとされる[SRC-00897]。第2段(S-II)の分離・第3段(S-IVB)の着火の際にも、乗員は窓越しに光を視認したという[SRC-00897]。報告書はまた、夜間打ち上げのため、S-IVBのヨー方向の異常な動きに姿勢制御系と慣性計測ユニットの喪失が重なるという複合的な故障が起きた場合、星や地平線を目視できないことでバックアップのアボート(中断)判断が困難になる可能性があったと記録している[SRC-00897]。船内の照明は、エンジン点火直後とリフトオフ直後の数秒間に乗員が眩惑されるのを防ぐためほぼフル照度に設定されており、この結果、乗員は暗順応を得られず、飛行中に星も地平線も一度も視認できなかったと報告書は記す[SRC-00897]。報告書はさらに、仮にモードIIまたはモードIVのアボートに星の視認が必要だったとしても、飛行中に得られたわずかな暗順応ではアボートは辛うじて成功する程度にとどまっただろうという船長の見解を記し、夜間打ち上げで星の視認が要件として有効であるなら、動力飛行時のコックピット照明構成について真剣な検討が必要だと勧告している[SRC-00897]。
歴史的背景
NASAの公式ミッションページは、このミッションを「The Apollo Program's last lunar landing mission」(アポロ計画最後の月面着陸ミッション)であり、かつ「the first to include an astronaut-scientist」(宇宙飛行士兼科学者を初めて含んだミッション)だったと位置づけている[SRC-00896]。ミッション報告書自身も、打ち上げの記述の冒頭でこの飛行を「the final Apollo mission」(最後のアポロミッション)と呼んでいる[SRC-00897]。スミソニアン国立航空宇宙博物館も、このミッションを「The last Apollo mission」(最後のアポロミッション)と題し、「As of 2019, the last time anyone set foot on the Moon was during the Apollo 17 mission」(2019年時点で、人類が最後に月面に降り立ったのはこのミッションの際だった)と記している[SRC-00898]。同館は同じ記述の中で、船長サーナンについて「Eugene Cernan was the last Apollo astronaut to walk on the Moon.」(サーナンは月面を歩いた最後のアポロ宇宙飛行士だった)と述べたうえで、続けて「As of 2019, no other human being has attempted to follow in his footsteps.」(2019年時点で、他の誰も彼に続こうと試みていない)と記している[SRC-00898]。本サイトが確認できた範囲では、これら3出典(NASA公式ミッションページ・NASA公式ミッション報告書・スミソニアン国立航空宇宙博物館)はいずれも、この飛行をアポロ計画という枠内での「最後」のミッションと位置づける点で一致している。このうちNASA公式ミッションページは、これを「アポロ計画最後の有人月面着陸ミッション」とも位置づけている[SRC-00896]。なお、2019年より後、本サイト執筆時点(2026年)までの間に人類が月面に到達した例があるかどうかについては、本サイトが確認した出典の範囲では言及がなく、確認できていない。
タイムライン
| 日付(暦種別を明記) | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 1972年12月7日 T-30秒時点(グレゴリオ暦) | 自動カウントダウン・シーケンサーの故障によりホールド発生 | [SRC-00897] |
| 1972年12月7日 グリニッジ標準時05時33分00秒(米東部標準時午前0時33分00秒)(グレゴリオ暦) | アポロ17号、ケネディ宇宙センター第39発射施設から打ち上げ(2時間40分遅れ) | [SRC-00897] |
| 1972年12月19日(グレゴリオ暦) | アポロ17号、地球へ帰還・splashdown | [SRC-00896] |
異説・論争 — 定説のない論点があります(開く)
確認された異説: なし(調査範囲: NASA公式ミッションページ[SRC-00896]・NASA公式ミッション報告書〔NASA-TM-X-69292/JSC-07904、1973年3月刊〕[SRC-00897]・スミソニアン国立航空宇宙博物館[SRC-00898]の3出典。打ち上げの日付・場所・乗員構成・「アポロ計画最後のミッション」という位置づけについて、出典間の記述の食い違いは確認されなかった。なお、このうち「アポロ計画最後の有人月面着陸ミッション」という有人月面着陸に限定した表現を用いているのはNASA公式ミッションページ[SRC-00896]のみである)。
なお、打ち上げの正確な時刻(グリニッジ標準時05時33分00秒/米東部標準時午前0時33分00秒)は、本サイトが確認できた範囲ではNASAのミッション報告書[SRC-00897]のみが記しており、NASA公式ミッションページ[SRC-00896]・スミソニアン国立航空宇宙博物館[SRC-00898]はいずれも打ち上げ日(1972年12月7日)のみを記し、時刻までは記していない。これは出典間の対立ではなく、記載の詳細度の違いである。
| 論点 | 説 | 根拠・出典 | 学界での位置づけ |
|---|---|---|---|
| 該当なし(調査範囲は上記のとおり) | — | — | — |
関連する出来事
- アポロ17号は、1972年12月19日に地球へ帰還・splashdownし、ミッションを終えた[SRC-00896]。NASA公式ミッションページは、この飛行を「their successful 13-day Moon landing mission」(13日間にわたる月への飛行を成功させたミッション)と振り返っている[SRC-00896]。
- スミソニアン国立航空宇宙博物館によれば、ミッションの目的は月のタウルス・リットロー高地における地質調査と火山活動の調査だった[SRC-00898]。同館は、月面車(Lunar Roving Vehicle)の後部フェンダーの一部が破損し、月面の塵(ダスト)が装備に飛散する問題が生じたため、乗員の睡眠中にミッション・コントロールが月面図・ダクトテープ・クランプを使った応急のフェンダー延長部を考案し、これが機能したという経緯も記録している[SRC-00898]。
関連人物
- ユージン・A・サーナン(Eugene A. Cernan): アポロ17号の船長[SRC-00896][SRC-00897][SRC-00898]。NASA公式ミッションページによれば、宇宙での飛行時間は566時間15分に及び、うち73時間超を月面で過ごした。月に2度飛行した2人の宇宙飛行士の一人であり、NASA公式ミッションページは「As the commander of the last Apollo mission to the Moon, Apollo 17, Cernan had the privilege and distinction of being the last person to leave his footprints on the surface of the Moon.」(アポロ計画最後の月へのミッションの船長として、月面に足跡を残した最後の人物であるという特権と栄誉を得た)と記している[SRC-00896]。
- ハリソン・H・シュミット(Harrison H. "Jack" Schmitt): アポロ17号の月着陸船操縦士[SRC-00896][SRC-00897][SRC-00898]。地質学者であり、NASA公式ミッションページによれば、1965年6月にNASAが初めて科学者宇宙飛行士を含めた宇宙飛行士訓練生の一員として採用され、アポロ15号のバックアップ要員を経て、1971年8月にアポロ17号の月着陸船操縦士に任命されたという。同ページは、シュミットが「the first scientist and twelfth person to step foot on the Moon」(初めて月面に降り立った科学者であり、月面に降り立った12人目の人物)だったと記す[SRC-00896]。
- ロナルド・E・エヴァンズ(Ronald E. Evans): アポロ17号の司令船操縦士[SRC-00896][SRC-00897][SRC-00898]。NASA公式ミッションページによれば、1966年4月にNASAが選抜した19人の宇宙飛行士の一人で、アポロ7号・アポロ11号の支援要員、アポロ14号のバックアップ司令船操縦士を務めた後、アポロ17号の乗員となったという[SRC-00896]。
歴史的意義
NASA・スミソニアン国立航空宇宙博物館のいずれも、このミッションをアポロ計画という一連の有人月面探査計画の締めくくりとして位置づけている[SRC-00896][SRC-00897][SRC-00898]。NASA公式ミッションページは、船長サーナンについて「As the commander of the last Apollo mission to the Moon, Apollo 17, Cernan had the privilege and distinction of being the last person to leave his footprints on the surface of the Moon.」(アポロ計画最後の月へのミッションの船長として、月面に足跡を残した最後の人物であるという特権と栄誉を得た)と記しており[SRC-00896]、この打ち上げは、その最後の飛行の始まりだった。
現代の視点
NASA公式ミッションページは、本サイトが直近に確認した版(2024年7月更新の表示)において、なおこの飛行を「The Apollo Program's last lunar landing mission」(アポロ計画最後の有人月面着陸ミッション)と位置づけている[SRC-00896]。スミソニアン国立航空宇宙博物館も、本サイトが直近に確認した版(2025年3月時点で内容が確認できた版)において、なおこの飛行を「The last Apollo mission」(アポロ計画最後のミッション)として紹介している[SRC-00898]。スミソニアン国立航空宇宙博物館は2019年時点の記述として、アポロ17号以降、人類が月面に降り立った例はまだないとも記している[SRC-00898]。もっとも、この2019年時点の記述が本サイト執筆時点(2026年)でもなお当てはまるかどうかは、本サイトが確認した出典の範囲では判断できない(本稿の整理)。
出典一覧
- [SRC-00896] Apollo 17/NASA(ランクA)
- [SRC-00897] Apollo 17 Mission Report/NASA Johnson Space Center(Mission Evaluation Team。原著者表記: NASA-TM-X-69292/JSC-07904)(ランクS)
- [SRC-00898] The last Apollo mission: Apollo 17/スミソニアン国立航空宇宙博物館(Smithsonian National Air and Space Museum)(ランクA)
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訂正履歴
| 版 | 日付 | 事実主張への変更 |
|---|---|---|
| 1 | 2026-09-06 | あり |
| 2 | 2026-09-06 | あり |
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