天皇陛下は即位礼正殿の儀で即位を宣明し、安倍首相が寿詞を述べて万歳三唱した
日付と暦
- 原典表記
- 令和元年10月22日(グレゴリオ暦)
- 換算
- 2019-10-22(グレゴリオ暦)
- 掲載日
- 10月22日のページ
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概要
2019年10月22日、皇居宮殿「松の間」で[SRC-00556][SRC-00561]即位礼正殿の儀が行われ、天皇陛下が「日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより皇位を継承いたしました。ここに『即位礼正殿の儀』を行い,即位を内外に宣明いたします」と即位を内外に宣明した[SRC-00555]。続いて内閣総理大臣安倍晋三が寿詞を述べ、同じ松の間で万歳三唱を行った[SRC-00557][SRC-00561]。政府は同日、限定的な恩赦(復権令)を公布した[SRC-00559]。同日実施予定だった祝賀御列の儀は、政府の閣議決定により11月10日へ延期され[SRC-00558]、台風第19号の被災地対応を優先するためと報じられた[SRC-00560]。一方、即位礼正殿の儀と饗宴の儀は予定どおり行われた[SRC-00556][SRC-00560]。この式典を含む一連の儀式への公費支出・国の関与のあり方は憲法の政教分離原則・国民主権原理に反するとの批判を招き、複数の訴訟に発展したが、2024年1月31日、東京地裁は国家賠償請求を棄却した[SRC-00562]。
本文
即位礼正殿の儀で天皇陛下が述べるおことばと、これに応える内閣総理大臣の寿詞の文言は、儀式当日に先立つ2019年10月15日の閣議で決定されていた。閣議では、内閣官房副長官が「お手元の『おことば』及び『寿詞』を朗読いたします」と述べたうえで両文書の全文を読み上げ、儀式当日まで非公表とすることが確認された[SRC-00557]。
10月22日、天皇陛下は皇居宮殿「松の間」でおことばを述べた。「さきに,日本国憲法及び皇室典範特例法の定めるところにより皇位を継承いたしました。ここに『即位礼正殿の儀』を行い,即位を内外に宣明いたします」との一節に続き、上皇陛下の30年以上にわたる在位への思いを述べたうえで、「憲法にのっとり,日本国及び日本国民統合の象徴としてのつとめを果たすことを誓います」と述べ、「国民の叡智とたゆみない努力によって,我が国が一層の発展を遂げ,国際社会の友好と平和,人類の福祉と繁栄に寄与することを切に希望いたします」と結んだ[SRC-00555]。
これを受け、内閣総理大臣安倍晋三は同じ松の間で寿詞を述べた。「天皇陛下におかれましては,本日ここにめでたく『即位礼正殿の儀』を挙行され,即位を内外に宣明されました。一同こぞって心からお慶び申し上げます」と述べ、「令和の代の平安と天皇陛下の弥栄をお祈り申し上げ」て結んだ[SRC-00557]。寿詞に続き、安倍首相は午後1時24分頃、松の間で万歳三唱を行った[SRC-00561]。
儀式では、歴代天皇に伝わる剣と璽(まがたま)からなる剣璽(「三種の神器」とされ、天孫降臨の神話に基づくとされる)に加え、公務で用いる御璽(天皇の印)と国璽(国の印)が高御座の台に奉安された。国事行為で用いる御璽・国璽をあわせて置くことは「宗教色を抑える工夫」と報じられている[SRC-00561]。天皇陛下は、天皇のみが着用できるとされる礼服「黄櫨染御袍」(鳳凰・麒麟の文様)をまとって臨んだ[SRC-00561]。また、天皇が高御座に登壇した後に初めて参列者がその姿を目にする「宸儀初見」という演出が導入された。宮内庁によれば、これは平安前期の儀式書『貞観儀式』に記載があるという。伝統的な形式に沿った形になったと報じられている[SRC-00561]。
政府は即位の礼にあたり、2019年10月18日の閣議で「復権令」及び「即位の礼に当たり行う特別恩赦基準」を決定した。このうち「復権令」は10月22日付で公布された[SRC-00559]。政令恩赦は、罰金刑を受け終え3年以上再び処罰されていない者を対象とする「復権」(資格制限の解消)のみに限定され、大赦・減刑は行われなかった。あわせて特別基準恩赦として、一定の基準に基づき個別に審査した対象者について「刑の執行の免除」及び「復権」も実施することとされた[SRC-00559]。
饗宴の儀は10月22日を含め、10月25日・29日・31日にも行われた[SRC-00556]。
歴史的背景
現行憲法下での即位礼正殿の儀は今回が2度目であり、1990年(平成2年)の様式をほぼ踏襲したと報じられている[SRC-00561]。旧憲法下の昭和の即位礼では、当時の田中義一首相が一段低い庭に下りて昭和天皇を見上げる位置で万歳三唱したが、平成の即位礼以降は首相が天皇陛下と同じ部屋で万歳三唱する形式に改められ、これは国民主権を意識したものと報じられている。万歳の前に「ご即位を祝して」との言葉を添えて趣旨を明確にする点も、平成から取り入れられた配慮とされる[SRC-00561]。即位礼正殿の儀をかつて定めていた明治期の「登極令」は戦後廃止されており、平成の代替わり以降、国民主権や政教分離に反するとの批判を招かないよう一部の先例が変更され、今回の式典の多くはその変更を踏襲したものだと報じられている[SRC-00561]。
タイムライン
| 日付(暦種別を明記) | 出来事 | 出典 |
|---|---|---|
| 2019-10-15(グレゴリオ暦) | 閣議で、即位礼正殿の儀における天皇陛下のおことば・内閣総理大臣の寿詞の文言を決定(儀式当日まで非公表) | [SRC-00557] |
| 2019-10-17(グレゴリオ暦) | 政府が台風第19号の被災地対応を優先し祝賀御列の儀を延期する方向で調整していると報道 | [SRC-00560] |
| 2019-10-18(グレゴリオ暦) | 閣議で、祝賀御列の儀の11月10日への延期、及び即位の礼に伴う恩赦(復権令等)を決定 | [SRC-00558][SRC-00559] |
| 2019-10-22(グレゴリオ暦) | 即位礼正殿の儀・饗宴の儀(1回目)を実施。恩赦(復権令)を公布 | [SRC-00555][SRC-00556][SRC-00559] |
| 2019-10-25/10-29/10-31(グレゴリオ暦) | 饗宴の儀(2〜4回目)を実施 | [SRC-00556] |
| 2019-11-10(グレゴリオ暦) | 延期されていた祝賀御列の儀を実施 | [SRC-00556] |
| 2024-01-31(グレゴリオ暦) | 東京地裁が、即位の礼・大嘗祭への国費支出等をめぐる国家賠償請求を棄却 | [SRC-00562] |
異説・論争 — 定説のない論点があります(開く)
即位礼正殿の儀を含む一連の儀式(即位の礼・大嘗祭)への国費支出・国の関与のあり方が、憲法の政教分離原則(憲法20条・89条)や国民主権原理に反するかをめぐり、立場が分かれた[SRC-00562]。
| 論点 | 説 | 根拠・出典 | 学界での位置づけ |
|---|---|---|---|
| 儀式への国費支出・国の関与は政教分離原則・国民主権原理に反するか | 反する(批判的立場): 宗教関係者・大学教員ら(2018年12月提訴時241人、2024年判決時317人)は、即位の礼・大嘗祭への国費支出等が政教分離や国民主権の原則に反し、信教の自由や納税者基本権を侵害すると主張。日本共産党(小池晃書記局長)も、高御座から即位を宣明する形式などを理由に「憲法の国民主権、政教分離の原則に反する」として即位礼正殿の儀を欠席した | [SRC-00561][SRC-00562] | 東京地裁・東京高裁・最高裁で争われたが、いずれの審級も原告側の主張を認めていない(下記参照)[SRC-00562]。政教分離をめぐる学界(憲法学)の議論との関係については、本記事は対応する学術資料(Aランク)に到達しておらず記載していない |
| 同上 | 権利は侵害されない(裁判所の判断・合憲性は判断を留保): 2024年1月31日、東京地裁は国家賠償請求を棄却した。判決は「政教分離原則は国及びその機関が行うことのできない行為の範囲を定めることで間接的に信教の自由の保障を確保しようとするものであり、私人に対して信教の自由そのものを直接保障するものではない」として、儀式が政教分離の原則に違反しているとしても原告らの権利や利益は侵害されないと判断した(政教分離原則違反の有無そのものについては判断していない)。信教の自由・思想良心の自由についても、原告に特定の信仰や行動を禁止・強制した事実はないとして侵害を認めず、主権者としての地位や納税者基本権についても個々の国民の具体的な権利とはいえないと判断した。なお、これに先立つ差止め請求は2019年に、人格権に基づく差止め請求は2021年に、いずれも却下・棄却されている | [SRC-00562] | 東京地裁の判断であり、原告側は控訴する方針を示している。政教分離をめぐる学界(憲法学)の議論との関係については、本記事は対応する学術資料(Aランク)に到達しておらず記載していない。2026年9月時点で本記事は控訴審以降の帰趨までは確認していない(調査範囲:本記事執筆時点で入手できた2024年1月31日の東京地裁判決の報道まで) |
関連する出来事
- 剣璽等承継の儀・即位後朝見の儀(2019年5月1日): 即位礼正殿の儀に先立って行われた、皇位継承に伴う一連の儀式の一つ[SRC-00556]。
- 祝賀御列の儀(2019年11月10日): 即位礼正殿の儀と同日(10月22日)に予定されていたが、政府の閣議決定により延期され[SRC-00558]、台風第19号の被災地対応を優先するためと報じられた[SRC-00560]。
- 1990年(平成2年)の即位礼正殿の儀: 現行憲法下で最初に行われた即位礼正殿の儀で、2019年の式典はその様式をほぼ踏襲した[SRC-00561]。
関連人物
- 天皇陛下: 令和元年10月22日、即位礼正殿の儀で皇位継承と即位を内外に宣明するおことばを述べた[SRC-00555]。
- 皇后陛下: 天皇陛下とともに儀式に臨んだ(「両陛下」)[SRC-00561]。
- 安倍晋三(あべしんぞう): 当時の内閣総理大臣。天皇陛下のおことばに続いて寿詞を述べ、万歳三唱を行った[SRC-00557][SRC-00561]。
歴史的意義
即位礼正殿の儀は、日本国憲法下での天皇の地位(日本国及び日本国民統合の象徴)を式典としてどう表現するかという課題に、具体的な演出の積み重ねで応えようとした事例である。首相が天皇と同じ部屋で万歳三唱する形式や、剣璽に加えて国事行為用の御璽・国璽をあわせて奉安する構成は、伝統的な儀礼を維持しつつ国民主権・政教分離との整合性を意識したものだと報じられている[SRC-00561]。もっとも、こうした配慮そのものが十分かどうかは意見が分かれ、日本共産党の欠席や、国費支出等を違憲とする訴訟という形で異論が示された[SRC-00561][SRC-00562]。2024年の東京地裁判決は、儀式が政教分離の原則に違反しているとしても原告らの権利や利益は侵害されないとして請求を棄却しており、政教分離原則違反の有無そのものについては判断を示していない。儀式の合憲性についての最終的な司法判断が示されたわけではない(本サイトの整理)[SRC-00562]。
現代の視点
皇位継承儀式のたびに、国事行為としての儀式と皇室の伝統的な儀礼・宗教的要素との関係、公費支出の妥当性が改めて問われる構図は、平成・令和の代替わりを通じて繰り返されている。2024年の東京地裁判決も、儀式が政教分離の原則に違反しているとしても原告らの権利や利益は侵害されないという理由で請求を退けており、政教分離原則違反そのものについての判断は留保されたままである。政教分離をめぐる評価は今後の皇位継承の機会にも引き続き論点となり得る(本サイトの整理)[SRC-00562]。
出典一覧
- [SRC-00555] 即位礼正殿の儀の天皇陛下のおことば/宮内庁(ランクS)
- [SRC-00556] お代替わり関係特集/宮内庁(ランクS)
- [SRC-00557] 閣議及び閣僚懇談会議事録(令和元年10月15日)/内閣官房(ランクS)
- [SRC-00558] 閣議及び閣僚懇談会議事録(令和元年10月18日)/内閣官房(ランクS)
- [SRC-00559] 「復権令」及び「即位の礼に当たり行う特別恩赦基準」について/法務省(ランクS)
- [SRC-00560] 即位祝賀パレード延期へ 台風被災地対応を優先/産経新聞社(産経ニュース)(ランクB)
- [SRC-00561] 平成の式典を踏襲 国民主権や政教分離配慮/日本経済新聞社(ランクB)
- [SRC-00562] 「即位・大嘗祭」国家賠償請求に棄却判決 争点は「政教分離原則」「信教の自由」「納税者としての権利」など/弁護士JPニュース編集部(弁護士JP、アシロ)(ランクB)
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訂正履歴
| 版 | 日付 | 事実主張への変更 |
|---|---|---|
| 1 | 2026-09-04 | — |
| 2 | 2026-09-04 | あり |
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